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「今はゲームメイクよりも、前で脅威に」
本田圭佑の変化と、変わらないもの。  

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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posted2014/10/09 10:40

「今はゲームメイクよりも、前で脅威に」本田圭佑の変化と、変わらないもの。 <Number Web> photograph by AFLO

ゴールという結果が、何よりもチームと監督の信頼を得る特効薬である。セリエAで今季すでに4得点の本田圭佑は、代表でもその決定力を見せてくれるだろう。

本田が語る日本人の特質と、“個”。

 あるセリフが、思わず頭に浮かんだ。昨年、本田に力説されたことがあった。

「戦術や組織で戦う感覚はね、もう持ってるのよ、日本人は。生まれながらに日本人は規律を持っている。これはね、ブラジルの選手がトウキックでゴールを決めるという感覚と同じ。元々あるもの。俺らだってそういうものがある。

 生まれながらに、規律を持って戦うという感覚を俺らは持っている。もちろんサッカーにとって組織で戦う感覚は必須なもの。忘れたらあかんこと。ただ、それはもうわかった話。だからこそ、サッカーの勝負をその視点だけでいろいろ言うのはもうしつこいこと。もうW杯前の今の時点から、俺はこれを話している。つまり、“個”の重要性を。結局は、個なのよ、この世界は。気づくのが遅かったよ、俺は。だいたいオランダに行ってからこのことに気付いて変わったから」

 本田はW杯で突き付けられた現実を胸に、プレースタイルの改革に挑んでいる。それは同時に、自らの“個”を磨くことであると信じ込むように。そして、他の代表の面々にも、それを強く望んでいる。

 W杯直前、本田はこれまでの言葉を覆すように「ここからは個の話ではなく、チームとしてどう伸ばしていくかを意識したい」と話していた。もちろん、自分の考えを否定したわけではない。大会本番までは時間がないなかで、ここから技術的、体力的な能力を急激に伸ばすことは難しいという判断から出てきたものだった。

真新しい本田の中には、ブレない哲学があった。

 いま、あらためて本田は“個”の成長に目を向けている。W杯でコロンビアに見せつけられたような、数的同数、不利な状況でも敵の網を打開していくプレー。それを日本の選手たちが実現するためには、さらに一人ひとりのスキルや判断能力を上げていかなくてはならない。

 記者に対する口数は増えたが、前よりも随分と淡々と話す口ぶりは、何か核心を隠しているようにも見える。すべてを言葉にはしない。だからこそ、出てくるセリフの中から、本田の本心やいまの考えを見抜く必要がある。

 変化と不変。選手としての成長へのアプローチは、確かに変わりつつある。ただし、本質は何も変わらない。真新しい今の本田の中には、ブレない哲学を持つ“あの本田圭佑”がしっかり存在している。

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