サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「今はゲームメイクよりも、前で脅威に」
本田圭佑の変化と、変わらないもの。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2014/10/09 10:40
ゴールという結果が、何よりもチームと監督の信頼を得る特効薬である。セリエAで今季すでに4得点の本田圭佑は、代表でもその決定力を見せてくれるだろう。
「しゃべる本田」が戻ってきた。
10月7日。台風18号の影響で帰国が遅れた本田は、1日遅れで代表練習に合流した。最近は、W杯前のような張り詰めた緊張感をあまり漂わせることがない。先月に続き、今月もキャプテンを任されることが濃厚だが、「キャプテンになればですか? どうなんでしょうね、まあ前にも話しましたけど、皆さん(記者)への対処の仕方が変わるんじゃないですか」と話した。ミランでの試合後もここのところはミックスゾーンで足を止めることが増えてきており、少しずつ昔の「しゃべる本田」が戻りつつある。
記者はそんな本田に、次々と質問を投げかける。ミランで見せているスピーディなプレーについて質問が飛んだ時、本田の返答はこうだった。
「何かで計測しているわけではないので、実際には(速くなったかどうかは)わからない。でも身体能力を上げていく作業は今までもしてきましたし、今年に入ってからのことではない」
先日のセリエA第6節・キエーボ戦で決めた直接FK。今季からミランにはセットプレー専門のジョヴァンニ・ヴィオコーチが就任したが、その影響と効果については?
「彼から言われていることは、しっかりと練習でセットプレーの時間を作ること。できるだけ蹴る頻度を増やす。そういう基礎的な、反復練習が結果に結びつく」
眼から鱗のような話を皆が期待していたが、本田からそんな発言は飛び出さなかった。
「1カ月、2カ月で人間パワーアップするわけじゃない」
いま、世間が再注目する自分の姿については、本田は率直にこう述べた。
「W杯で敗戦したことで、イチから価値観や基準を変える必要があった。どうしてもいまは数字がクローズアップされてしまうんですけど、自分の中では別に取り組んでいるものがある。
まあ、気が早いですけどね、こんな(W杯が終わって)1カ月、2カ月で人間パワーアップするわけはない。W杯後に自分の物差しを作り直したいと言いましたけど、いまはどちらかというとその物差しを建設中。いまちょうど、ビルドアップしているところなので。その過程で(得点などの)結果として形になっているのは、本当たまたまなところもあるかもしれない」
選手として結果を出し続けているのは、当然いいことだ。ただ、いま自分がちょっとした成果を出しただけで、そこに大きな何かが隠されていると見られるのは心外なのだ。本田は、周囲の早計な態度や判断に、あくまで冷静な口調ながらもピシャリと釘を刺したのだった。