Survive PLUS ~頂点への道~BACK NUMBER
アギーレとクーマン、2つの“新体制”。
吉田麻也が直面する異なる課題とは。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2014/09/25 16:30
レギュラーの座を掴みかけたタイミングで、接触により靭帯を痛めてしまった吉田麻也。サウサンプトンは5節終了時点で2位と好調で、苛烈なレギュラー争いは始まったばかりだ。
経験、語学、五輪での経験というアドバンテージ。
ところが、札幌の地で記者陣から連日問われたのは、主将に対する意気込みだった。「毎日のように連続して聞かれましたよ」と笑いながら振り返るが、2年前のロンドン五輪代表でもキャプテンを任されたセンターバックに、主将に関する質問は集中し続けた。
その模様は、日本の守備陣の本格的リーダーとしての責任が増していくことをも示唆している。ザックジャパンでは、今野泰幸という年上の相方が隣にいた。しかし、アギーレジャパンの初招集メンバーを見渡せば、センターバックに吉田を超える経験を持つ選手はいない。
さらに、語学力もアドバンテージのひとつだ。前述した主将候補の3選手は、全員英語が堪能だ。アギーレはスペイン語以外に英語も操ることから、直接会話のできる選手たちに選手との窓口役を任せたいのは自然な流れだ。
「たとえキャプテンに指名されたとしても、そうでないとしても、僕の意識はあまり変わりないですよ。だって、センターバックはどうしたって味方に率先して指示を出していかないといけないポジションですから。黙々とプレーするなんて僕はあり得ない」
主将であろうとなかろうと、スタンスは変わらない。思えば2年前、ロンドン五輪に向かう前も、吉田はこれとまったく同じセリフを口にしていた。そしてその言葉どおり、彼は自然体でチームへと加わり、ピッチ外では明るく、ピッチ上では厳格に味方を鼓舞したのだった。
アギーレに感じた、予想と全く異なる印象。
「でも、もし今後キャプテンに指名されたら……それは、やりますよ」
今度も同じように振る舞う準備はできているからこそ、吉田は胸を張ってそう語った。
アギーレからの信頼を受けとった吉田。一方で、吉田にとっても新指揮官への印象は、危惧とは全く異なるものだったようだ。
「オーソドックスなスタイルだけど、しっかり守備の戦術を持っている。ザックさんのときは高いラインに設定して、前から奪いに行く形だった。アギーレさんの場合は、基本はブロックを作りながら、入ってきた相手に対してしっかりプレッシャーを掛けてボールを奪う。前線のボールの追い方も、サイドに寄せておいてそこで奪いに行くというスタイルですね。
でも、今回の2試合で監督はすべてを僕らに落とし込んだわけではないと思う。まだまだアナウンスされていない戦術もあるような感じ。だから10月、11月でまたどんなチーム作りをしていくかも楽しみなところです」
ウルグアイ戦、ベネズエラ戦の試合中、アギーレは吉田をピッチ脇に呼び、直接指示するシーンがあった。直接密な会話ができ、戦術眼にも長けたセンターバックを、歴戦の指揮官は今後さまざまな場面で活用していく可能性が垣間見えた瞬間だった。