サムライブルーの原材料BACK NUMBER
大学、鳥栖、代表と幸運を手にして。
坂井達弥は「運を実力に変える」。
posted2014/09/22 10:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
世の中には「強運の持ち主」がいる。
一般的ではなく極めて稀だから、そんな存在がいれば自然と目を引いてしまう。
日本サッカー界にも該当者がいる。
アギーレジャパンにサプライズ選出され、一躍、時の人になったサガン鳥栖のセンターバック、坂井達弥だ。
23歳、プロ2年目。対人に滅法強く、利き足の左足から繰り出すロングフィードがウリだ。だが、ケガなどもあってアギーレジャパン初めてのメンバー発表前までは、今季リーグ戦わずか4試合の出場にとどまっていた。首位争いに食い込むチームではあるが、完全なレギュラーとは言いがたく、世代別の代表経験もない。極めて無名に近い。
ただ何故、強運なのかと言えば、単に代表に選ばれたというだけでなく、その背景にある。
何しろ約4カ月ぶりのリーグ戦出場となった8月23日の大宮アルディージャ戦に、たまたま代表スタッフのGKコーチが訪れていた(林彰洋が目当てだったという噂だ)というその偶然性。そしてその大宮戦も、当初は先発予定ではなかったそうだ。チームメイトのアクシデントによって、急きょ先発の機会が巡ってきたのだ。
ウルグアイ戦から1週間、坂井を直撃した。
代表に選ばれただけでも十分、サプライズ。だが、そのうえアギーレジャパン初陣のウルグアイ戦に先発して90分フル出場を果たしている。ここまで来れば「強運」もかなりの高レベルだ。
ウルグアイ戦で活躍していれば、これ以上ないシンデレラストーリーになるはずに違いなかった。しかし結果的には、ホロ苦い代表デビュー戦になってしまった。酒井宏樹から受けたパスをトラップミスして、そのまま相手に奪われてゴールを決められてしまったからだ。続くベネズエラ戦では出番が与えられなかった。
あれから1週間が過ぎ、坂井は鳥栖でトレーニングに励んでいた。午前中に2時間みっちり全体練習した後、午後もクラブハウスに顔を出して体を動かしていた。鳥栖の選手たちは、本当に良く練習をする。坂井もその一人である。
あらためて代表に選ばれたことを聞いてみた。