フットボール“新語録”BACK NUMBER
本田圭佑が語った好調の理由。
裏への意識、プレーエリア、守備負担。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2014/08/28 10:30
TIMカップのユベントス戦で4-3-3の右FWとして出場した本田圭佑は、決勝点となるゴールを決めた。続くサッスオーロ戦でも1アシストを記録して、最優秀選手に選出された。
本田「自分の中で今季の目標は決めている」
――開幕に向けていい準備ができていると思う。今季の目標は?
「まあ、自分の中では決めてはいるんですけど、そのうち話せればなと。レギュラー争いの真っただ中にいる自分自身としては、まだまだ安心できるような状況ではないんでね。ホント日々いい緊張感と言いますか。CSKAではあまりこういうことを味わったことがなかったんで。まあでもよく考えたら、CSKAでも1年目はよく先発から外れてたかな」
―――ハハハ。確かに1年目は監督と考えが違う部分があって、先発を外れることもあった。
「そうそう。だからちょっとずつ結果を出せば、ここでもしっかりと確固としたポジションを確立できるかなと思うので。今日みたいな目に見える数字を毎試合、可能な限り積み重ねることが大事ですね」
――この夏は合宿をしっかりとやれたのが大きかった? 冬はシーズン中にCSKAから加入して準備期間がほとんどなかった。
「いや、それでもW杯組は遅く合流したし、満足いく期間があったかと言えば、合流して3日くらいで試合に出たりしましたから。コンディションに関しても後半はまだまだ満足できる動きではなかったし、凡ミスも疲れてから出てきたりとか。それもコンディションが改善されれば減っていくと思うので、毎週毎週、常に向上させていきたいなと思いますね」
フェンロでも、CSKAでも、本田は必ず壁を乗り越えてきた。
数分間が経つと、ミランの広報が「そろそろ」とこちらの肩を叩いた。チャーター便でミラノに戻るため、空港へ向けて出発しなければならないらしい。ただ短い時間ながらも、「裏への意識」と「プレーエリアの最適化」という2つの見立てがそれほど的外れではないことは確認できた。
「じゃあ、また」
地元ファンからサインをせがまれ、すぐに行きたそうな広報を横目に、ゆっくりと撮影に応じた後、メスタージャの古い金属製の扉に吸い込まれていった。
オランダのフェンロに加入したときも、ロシアのCSKAに移籍したときも、本田は1年目に壁にぶつかっている。フェンロでは移籍から半年で2部に降格し、CSKAでは途中で監督の意向に従わず干されかけた。それでも必ず壁を乗り越え、信頼関係を築き、気がつけばチームの中心になっていた。
ミラン加入から約8カ月。反撃へと転じる分岐点を迎えようとしている。