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「機動破壊」が壊した常識と精神。
健大高崎が甲子園に残した“衝撃”。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKyodo News

posted2014/08/22 18:25

「機動破壊」が壊した常識と精神。健大高崎が甲子園に残した“衝撃”。<Number Web> photograph by Kyodo News

二盗のみならず、三盗をも多用する健大高崎の「機動破壊」は他を圧する存在感を放っていた。この衝撃は、高校野球界に新たな戦術の潮流を生むだろうか。

「流れができると、誰が走ってもセーフになる」

 1回戦から、健大高崎はいずれも試合の最初の盗塁を成功させ、そこから一気に盗塁数を重ねていった。1回戦(対岩国)は4盗塁、2回戦(対利府)は11盗塁、3回戦(対山形中央)は7盗塁。

「極端な話、走ればセーフになるという流れが一度できると、誰が走ってもセーフになっちゃう。相手もあきらめてきますからね。一度、8秒台の選手が三盗を成功させたこともありますが、そういう感じになってくるんです」

 大阪桐蔭戦の初回、1番・平山敦規が四球で出塁。次打者の2球目にさっそく盗塁を成功させる。平山は送りバントで三塁に進み、3番・脇本直人の犠牲フライで生還。ノーヒットで1点を挙げるという健大高崎らしい先制攻撃で流れはできたはずだった。

「まだうちが歴史に必要とされていないということ」

 しかし盗塁は4個決めたものの、再三の好機にあと1本が出ず、2-5でまたしても大阪桐蔭に屈した。

「相手ピッチャーも、こちらの足は嫌がってたことは嫌がってたんでしょうけど、走られてもホームに還さなきゃいいんでしょ、という感じだった。まだまだ甘いと言われた気がしました」

 4回には2死一、三塁からダブルスチールを成功させ、3-2と勝ち越したかに思えたシーンもあった。しかし空振りした打者がバッターボックスを出てしまい、守備妨害を取られアウトに。それ以降は、見せ場らしい見せ場もつくることができなかった。

「甲子園って、必ず1試合は伝説の試合みたいのがあるじゃないですか。それを自分たちがつくってやろうと思っていたんです。でも負けてしまったということは、まだうちが歴史に必要とされていないということなんでしょうね」

 葛原は今後も、さらに機動力に磨きをかけるつもりだ。そして理想の形をこう語った。

「たとえば東邦は、すごい走塁がうまかった。でも打撃がいいので、あんまり注目されなかった。逆にうちは打撃がないぶん、機動力ばかりが注目された。今度は出るときは、今以上に走って、でも打撃に隠れてそのことに気づかれないようなチームにしたい」

 機動破壊という言葉が霞むほどの打力が備わったとき。今度こそ、健大高崎が「伝説」をつくる。

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