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昨秋覇者・沖縄尚学が失った「底力」。
“ライアン”山城、夏の暑さに散る。
posted2014/08/22 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
まだ諦める点差じゃないはずだ。
“あの戦い”を見たものからすれば、そう思ったに違いない。
昨秋の明治神宮大会決勝・日本文理戦。
沖縄尚学は6回を終えて8点差をつけられながら、7回に3点を奪うと、8回にも6点を奪って奇跡の逆転勝ちをしている。同世代の球児や指導者たちに「沖縄尚学の底力」を印象づけた試合だった。今大会の開幕前から沖縄尚学の評価が高かったのも、あの試合があったからだと言っても過言ではない。
22日の準々決勝第1試合、沖縄尚学は6回を終えて2-8と三重にリードされていた。
猛打を誇る三重に圧倒されて大きな点差がついたが、沖縄尚学の打力をもってすれば、6点差は決して絶望的な点差ではない――はずだった。
試合前、この日の注目は両チームの投手起用だと思っていた。
ともに中1日という過酷な条件で迎えた試合であり、軸を担ってきた投手には疲労が蓄積している。大会も終盤に差し掛かり、エースに万全は望めない段階の戦いに両チームは足を踏み入れていた。
決勝戦までの長丁場、準々決勝はターニングポイント。
決勝までの戦いを考えた時に、準々決勝というのは1つのターニングポイントである。ここでいかにエースを休ませるか、投手の状態をどう維持するかが、大会結果を大きく左右するといっても、言い過ぎではない。
沖縄尚学の比嘉公也監督といえば'08年の春、当時のエースだった東浜巨(現ソフトバンク)を準々決勝の天理戦で先発から外し、優勝を果たしている。決勝までを見据え、上手くエースを休ませることに成功したのだ。それだけに、沖縄尚学がこの試合でどんな戦いを見せるのかが気になっていた。そして準々決勝での投手起用が重要であるのは、相手の三重にしても同じことだ。
しかし、両指揮官が先発として送り込んだのは、ともにエースの山城大智(沖縄尚学)と今井重太朗(三重)だった。