ブラジルW杯通信BACK NUMBER
初めての世界大会を味わった124分。
大迫勇也、「負けず嫌い」の逆襲。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2014/07/04 10:30
W杯ではコートジボワール戦とギリシャ戦で124分間ピッチに立ち、ゴールは0だった。夏からは奥寺康彦氏や槙野智章らもかつて所属した名門、FCケルンで新たな戦いが始まる。
実は大迫にとって初めてだった「世界大会」。
自分が終盤のピッチに立っていたら――。
両サイドから上がるクロスに対して、大迫はベンチでイメージを合わせていたのかもしれない。
しかし交代させられたのも、結局は己の実力。「悔しさ」「自分への腹立たしさ」がこみ上げていたに違いなかった。
大迫にとってブラジルW杯が初めての世界大会だった。
U-17W杯は本大会のメンバーから漏れ、ロンドン五輪は誰もが驚いた“サプライズ落選”。彼は悔しさをバネにして、成長を遂げてきた。昨年A代表に選出され、鹿島アントラーズでも19得点と爆発した。
今年に入ってから己を磨くためにドイツ2部1860ミュンヘンに移籍を果たしている。15試合で6ゴール。「もっと泥臭いゴールを取りたい」と語っていたが、ドイツの地でその泥臭さも身につけてきた。
「負けず嫌い」の性分がくすぐられている。
彼から五輪落選の悔しさについて、かつてこう聞いたことがある。
「(五輪のことは)あんまり振り返りたくはないけど、まあでもいい経験になってはいるのかな。悔しい思いをするのは大事だと思うから。ほとんどの選手が(悔しい思いを)しているわけであって、それを活かすも殺すも自分次第だと思うし、サッカーでしか取り返せないと思うから」
世界大会に行けなかった悔しさをバネにしたのがこれまでなら、世界大会を経験して味わった悔しさをバネにするのがこれから。「負けず嫌い」の性分が、かなりくすぐられているに違いない。
2018年のロシアW杯では、働き盛りの28歳を迎える。新生代表はロンドン五輪世代が中心になっていかなければならない。なかでもエースストライカーの存在は不可欠であり、大迫の“一人立ち”に期待も高まる。