ブラジルW杯通信BACK NUMBER
初めての世界大会を味わった124分。
大迫勇也、「負けず嫌い」の逆襲。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2014/07/04 10:30
W杯ではコートジボワール戦とギリシャ戦で124分間ピッチに立ち、ゴールは0だった。夏からは奥寺康彦氏や槙野智章らもかつて所属した名門、FCケルンで新たな戦いが始まる。
普段はクールな大迫が、珍しく感情をあらわに。
「コートジボワール戦はチーム全体が相手を意識しすぎたというか、それで引いてしまったというのがあって、前に全然人数を掛けられない状況が長い時間続いたせいで、一人ひとりの走る量も増えた。それで消耗して、全部後手になってしまったというのもあったと思う。その反省を踏まえて、ギリシャ戦はチームとして前から行って、ゲームを支配しようと。結局はボールを取れなかったけど、そこの部分はコートジボワール戦よりうまく消化できたのかな、とは思う」
代表ではずっと、クサビに入る練習に必死に取り組んできた。下がらずに前で起点になることも指揮官から口酸っぱく要求されていた。周りとコミュニケーションを取り、積み上げてきた連係を発揮する舞台がこのW杯。コートジボワール戦で出来なかった分、ギリシャ戦での大迫の意気込みは相当なものがあった。
前からの連動した守備と、相手のウイークポイントとみなした右サイド攻略で日本がペースを握った。そして大迫に、シュートチャンスが訪れた。
前半19分、内田篤人のパスを中央で待っていた大久保嘉人が落とし、そのボールを左足でミドルシュート。しかし、GKに阻まれている。ここでは裏に抜ける大久保へのパスも考えられたが、大迫は迷いなく打ち込んだ。
その2分後には今野泰幸からのクサビのパスを倒れながらキープして前に運び、そのまま右足でミドルシュートを放った。ゴール右へ外れてしまい、大迫は自分の足をバチーンと叩いている。普段はクールな性格だが、珍しく感情をプレーであらわにしている。
「そこにいたかったという思いはありますよ」
後半に入ると、べた引きの相手にスペースがなくなっていた。得点を奪えないまま、後半12分に香川真司と無念の交代。チームは、一人少ないギリシャに対してサイドからクロスを上げていくが、ニアに誰かが飛び込むパターンはそう多くなかった。大迫は忸怩たる思いでこの光景を目に焼きつけていた。
「自分が交代して、ちょっと経ってからセンタリングが結構上がるようになったんで、そこにいたかったという思いはありますよ。
ニアに入ってくれというのは、(長友)佑都さんにも言われてるし、逆に俺も『GKとDFの間にボールを入れてほしい』というのは、常に言ってるんで。前半はなかなかそういうシーンがなかったけど、そこは真ん中で崩せていましたから」