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<ジョーカーの困惑>大久保嘉人「すべてが中途半端だった」
text by

木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMutsu Kawamori
posted2014/07/02 06:00

前線で体を張りながら感じていた、チームに対する違和感とは――。
コロンビア戦後、大久保嘉人の声が寂しそうに震えた。同時にかすかな怒りもにじみ出ていた。
「日本がポゼッションをやろうとして、スカッとする試合はこの4年間で1回もなかったと思う。外から見ていても、中から見ていても。そこがもったいないな……って」
大久保にとって2度目のW杯は、まずは監督に力を認めさせる作業からスタートした。大会直前に招集されたからだ。それでも準備期間に辛抱強く持ち味を見せ続け、コートジボワール戦で途中出場すると、ギリシャ戦に2列目の右サイドで先発。そしてコロンビア戦ではついに1トップの座を勝ち取った。
コロンビア戦翌日、大久保は何のてらいもなく言った。
「世間からはサプライズと言われていましたけど、結局2試合にスタメンで出ましたからね。もっと早く選んでくれていれば……という思いはずっとありましたが、まあそれは終わったことです」
大久保はコロンビア戦において、新たな日本人FW像を示した。1トップとしては32カ国中最も背が低いが、一瞬の動きでフリーになって隙間でボールを受け、相手が食いついて来たらドリブルでかわす。実際、ザックが試して来たどのFWよりもボールをキープできていた。
その秘密を、大久保はこう解説する。
「この代表の1トップはDFラインを下げさせ、中盤の選手を生かすようなやり方をずっとやっていた。でも外から見て、それじゃあ相手は崩れないと思った。自分が入ったら裏を狙いながらも、ちょっと引いてバイタルエリアでボールを受けて、前を向いてやろうと。そこは自分が思うようにやりましたね」
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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