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欧州勢初の南米W杯優勝のために。
ノイアーがまとい始めた「狂気」。
posted2014/05/21 10:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
ドイツ人の感覚からすると、どうもフレンドリーすぎるらしい。
雑誌『プレイボーイ』のインタビューにおいて、ドイツ代表GKのマヌエル・ノイアーは、こんな質問を投げかけられた。
「カーンやレーマンの時代、彼らは陰に陽にバチバチとやり合ってきました。でも、あなたはフレンドリーなGKでも一流になれることを示したのでは?」
一般的にドイツ人は自己主張が強いが、特にGKは少し変わった性格の人間が集まると言われている。自分だけ手が使える、仲間と違うユニフォームを着られる、注目を集められる……すべてが特別だ。それゆえに協調性に乏しい、尖った個人主義者を引きつける。実際、カーンやレーマンは常に騒動を巻き起こしてきた。
だがノイアーは、そういうドイツ人のイメージとは異なるタイプのGKなのだ。警察官の父の影響なのか、チームメイトと揉めることはほぼなく、ドイツ代表の控えGKたちとも「キーパーの練習には助け合いが必要。大切な仲間」と絶妙の距離を取っている。問題発言とも無縁だ。
ノイアーは諭すように『プレイボーイ』の記者に答えた。
「新しい世代は、もう昔とは違うんだ。バイエルンでも代表でも、GKの仲間と理解し合っている」
性格だけでなく、プレースタイルもモダン。
エゴイストでも、喧嘩屋でも、問題児でもない。ノイアーは「優等生タイプ」の新時代のドイツ人GKである。
性格だけでなく、プレースタイルも、モダンだ。
相手と1対1になっても、両手を広げてじっと動かず、全身で壁を作ってシュートコースを消す。ミドルシュートを打たれれば、193cmの長身を猫のようにしならせて横に飛んで弾き出す。
そして、最大の武器のひとつが足下の技術だ。
左右の足でボールを正確に扱うことができ、ロングキックの精度も抜群でビルドアップの第一歩になれる。さらに相手がDFラインの裏にパスを出せば、迷わずペナルティエリアの外に飛び出してクリアする。いわゆる「リベロ」になれるGKだ。