ブラジルW杯通信BACK NUMBER
バルデラマ時代のドラマが大ヒット!?
コロンビア「黄金期」の甘美な記憶。
posted2014/05/20 16:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
20年前に見た夢をコロンビア国民は忘れていない。
'90年代の初め、見た目も技も派手で個性豊かな男たちが“カフェテロス(=コロンビア代表の愛称)”に集結した。3原色のユニフォームを着た彼らは、鮮烈かつ濃厚なプレーで、彼の国特産のコーヒーのように人びとを魅了した。
型破りなのに優雅だった。金色の爆発ヘアに髭モジャの司令塔バルデラマ。褐色の快速FWアスプリージャが人智を超えた脚力を披露すれば、ゴールマウスには重力を無視して飛び跳ね回るGKイギータがいた。ひと目見たら忘れられない。
昨年の夏、放映が開始された連続TVドラマ『ラ・セレクシオン』の主役は彼らだった。
主力選手たちの群像劇として、“カフェテロス”の黄金時代を描いた全78話のドラマは、1話あたりの制作費が15万ユーロ弱という低予算にも関わらず、イギータらを初めとする当時の代表選手たちの全面協力や、身体作りと練習に2カ月を費やした俳優たちの奮闘もあって、空前の大ヒットを記録した。
人びとは、伝説のチームが躍動する姿に毎回TV画面へ釘付けとなり、異例の平均視聴者数900万人という数字を叩き出して、シリーズは大成功を収めた。
アルゼンチンを破った「93.9.5」の甘美な記憶。
ドラマのハイライトは、コロンビア代表史上ベストゲームとされる「93.9.5」決戦だった。
'94年アメリカW杯の南米グループ予選首位通過をかけたアルゼンチンとの直接対決。代表監督フランシスコ・マトゥラナに率いられたコロンビアは、敵地ブエノスアイレスでマラドーナ擁するアルゼンチンを5-0で粉砕、大勝利を挙げたのだ。
国民の熱狂は頂点に達した。
翌年、“カフェテロス”は北米大陸に勇んで乗り込んだが、本大会ではあっさりグループリーグで敗退した。それでも、国民の記憶は汚されることなく美しいまま、今も色褪せない。