セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
“梁山泊”ミランが首位を快走!
知将アッレグリの最新理論とは?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2011/01/21 10:30
指導者歴はまだ7年ながら、多士済々の選手を統率するアッレグリ監督。このまま首位を守り切りスクデットを獲得できるか?
イブラヒモビッチを守る“三銃士”とは何か?
同時に、アッレグリは下部リーグ指揮時代から定評のあった若手の積極起用も忘れていない。MFのメルケルやストラッセルといった、クラブの将来を担うユース組の登用は、これまでのミランでは見られなかったものだ。
こうした選手起用の妙も、ベースとなる自らの理論が確立していなければ意味がない。4-3-3をベースにした戦術の源流は、6年前に記した監督ライセンス講習の修了論文にある。『中盤に3枚配置した際に求められるMFのプレースタイル』と題された論文では、トライアングルに置かれた3MFの動きが攻守にわたって事細かに研究されている。
その応用が見られたのは、CLグループリーグも佳境に入った昨年11月。イブラヒモビッチへのマークが厳しくなった時期に、守備的MFの3人(アンブロジーニ、ガットゥーゾ、フラミニ)を並べる“三銃士”を編み出し、相手からエースをガードした。試行錯誤の末に得た“冬の王者”のタイトルは、ビッグクラブ初挑戦の指揮官には大きな自信となっただろう。
我の強い選手を手懐けて、ナポリ、インテルの猛追をかわせるか?
とはいえ、それでもミランの首位が盤石だとは言いがたい。
弱点として挙げられるのが、試合展開で苦境に陥ったときに個人能力頼みになってしまう点。また、CBネスタが負傷したときのバックアッパー不在という守備の問題もあり、ガットゥーゾは「インテルの追い上げが気になり始めている」と心理的影響を認めた。
前半戦を2位で折り返したナポリの士気は高く、FWカバーニの爆発もあり侮れない。インテルも新監督レオナルドが、古巣ミランに対し「ベルルスコーニはナルシスト。共存は不可能」と言い切り、不退転の覚悟で追撃態勢に入っている。
前半戦で勝ち点40を積み上げた後、アッレグリは「あと40点あれば優勝だ」と語り、すでに後半戦の星取り勘定を始めた。理路整然としたプレーや試合運びを好み、スマートな言動で知られる彼だが「スクデットがほしい」と野心ものぞかせる。冬の市場では、あのカッサーノも加入し、ミランはまさに“梁山泊”の相を呈してきた。
イブラヒモビッチのような我の強い選手たちを束ねるには、監督もお人好しではいられない。危うさと野心が同居する今季のミラン、後半戦も一見の価値がある。