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窮地のリバプールを“キング”が救う。
ダルグリッシュ監督復帰の効果は? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2011/01/20 10:30

窮地のリバプールを“キング”が救う。ダルグリッシュ監督復帰の効果は?<Number Web> photograph by AFLO

現役時代はセルティックとリバプールで活躍したダルグリッシュ。スコットランドとイングランドの両リーグで100得点したのは彼が初めてだった

 リバプールがケニー・ダルグリッシュの代行監督就任を発表した1月8日、親子代々でサポーターの友人記者から新年2度目の年賀メールが届いた。

「キング・ケニーが戻ってきた! 正真正銘のハッピー・ニュー・イヤー!!」

 たった2行のメールだが、彼の興奮ぶりは十分に伝わってきた。

 この数年間、リバプールで名誉職などに就いていたダルグリッシュの現場復帰は、“レッズ信者”にとって、常人の想像を絶するインパクトを持つ。FWとして活躍し、クラブ史上最も偉大な選手と称される“キング”は、監督としてもリバプールを3度のリーグ優勝と2度のFAカップ優勝に導いているのだ。リバプールが最後にリーグ優勝を果たした1990年もダルグリッシュが指揮を執っていた。

 ただし、今回の監督交代は経営陣の望むタイミングではなかった。昨年10月にリバプールを買収した新オーナーは、長期展望の下でチームに安定をもたらすことを優先していた。不振のまま12位で年を越した時点でも、昨夏に前オーナーが呼び寄せたロイ・ホジソン前監督を今季末まで続投させる覚悟だったと言われている。

サポーターを鎮められるのは“伝説の英雄”しかいなかった。

 チームは、目標のCL出場圏(4位以内)ではなく降格圏に近い位置をさまよっている。苦境に陥っている時にこそ一丸となって戦わなければならない。しかし、最下位だったウルブズにホームで敗れた(0-1)年末の一戦で、観衆が合唱した「ホジソンを代表監督に」という皮肉たっぷりの更迭要求を聞けば、ファンがチームと心を一つにしていないことは明らかだった。元日のボルトン戦には辛勝(2-1)したが、続くブラックバーン戦には完敗(1-3)。監督の交代なくしてリバプールの「一致団結」はあり得ない状態となった。

 この時点で、経営陣の目にダルグリッシュは最適の中継ぎ役と映ったに違いない。

 二代前のラファエル・ベニテス監督は前オーナーと衝突が絶えず、その先代のジェラール・ウリエも、国内外のカップ三冠を達成した2001年以降はネガティブな戦術が選手にもファンにも不評だった。

 クラブのカリスマであるダルグリッシュは、10年ぶりの「一致団結」をリバプールにもたらすかもしれない。昨夏にも監督就任を希望していたように、本人のリバプールに対する情熱は全く冷めていない。前述の通り、サポーターには溺愛されている。選手たちが伝説の英雄に一目も二目も置くことは間違いない。

【次ページ】 トーレスも認めるダルグリッシュ代行監督の存在感。

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