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“梁山泊”ミランが首位を快走!
知将アッレグリの最新理論とは?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2011/01/21 10:30
指導者歴はまだ7年ながら、多士済々の選手を統率するアッレグリ監督。このまま首位を守り切りスクデットを獲得できるか?
7年ぶりのスクデットに向けてミランが首位をひた走っている。
この好調ぶりは果たして本物なのか。優勝の鍵を握るのは、今季加入したFWイブラヒモビッチと監督マッシミリアーノ・アッレグリの2人だ。
優勝請負人として2年ぶりにミラノへ帰還した“ズラタン王”は、「すべてを勝ちつくす」と豪語すると前半戦で10ゴール、8アシストの大活躍。加入効果は絶大で、瞬く間にチームを自分色に染め上げると、12節のダービーでは決勝PKを決め、サポーターのハートも完全掌握した。
本人も「(インテルへは)何の感傷もない。ミランのためにプレーするだけだ」と、古巣への気遣いなどどこ吹く風。パトやインザーギなどFW陣に負傷が続いた苦境も、何より王様待遇を好むイブラヒモビッチにとってはかえって好都合に働いた。
好調からか、その舌もますます滑らかだ。CLオセール戦後の生中継で、カルチョ界の御意見番アリゴ・サッキに向かって「あんた、バルサ時代から俺についてしゃべりすぎなんだよ。俺のプレースタイルが気に入らないなら黙ってな」と暴言を連発。スタジオは凍りついたが、まったく悪びれないズラタンを止められる者は誰もいない。
さすがに「数年前のインテルが陥った“イブラ依存症”の危険性がある」との声も上がったが、アッレグリ監督は「それが何か問題でも?」と意に介さない。
レオナルド前監督が冷遇したベテランに信頼を与え、再生に成功。
若手理論派監督としてカリアリでの采配を評価され今季から抜擢された43歳の指揮官は、選手起用に関して十分に目を行き届かせている。
ミランはオーナーであるベルルスコーニ首相を絶対的な家長とした“ファミリー”にたとえられるが、それは厳然とした序列や外部指導者を受け入れない閉鎖性も意味している。新参が最初に覚えるべきは、ロッカールーム内のヒエラルキーだ。
アッレグリは、レオナルド前監督時代に冷遇されたベテランたちに再び信頼を与え、重要な試合をまかせた。結果、彼らはモチベーションを取り戻し、円熟味あるプレーが復活。ロッカールームの“主”であるガットゥーゾは「アンチェロッティ時代のように風通しが良くなった」と新監督の手法を歓迎した。