濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
5大タイトルマッチに分かれた明暗。
DEEPという戦場はなぜ過酷なのか。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2014/05/04 10:30
ライト級王座を防衛し、リング上でプロポーズを果たした北岡悟。フェザー級は横田一則が津田勝憲を、ライトヘビー級王座は中西良行が井上俊介をそれぞれ下し防衛、ウェルター級は悠太が奥野“轟天”泰舗を下し新王者に輝いた。
タイトルマッチが5試合組まれた4月29日のDEEP後楽園大会は、指定席券が短期間で売り切れとなり、追加の立ち見券が販売されるヒット興行になった。国内MMAの最前線であるDEEP、その頂点を決める闘いに、多くの格闘技ファンが注目したのだ。
出場選手の中には“メジャー経験者”も多かったから、いつもより“外側”のファンにアピールできたということもあるだろう。
メインイベントに出場したライト級王者・北岡悟は戦極で五味隆典を下し、同団体のベルトを巻いた選手。フェザー級王座の防衛戦を行なった横田一則も戦極出場組だ。UFCとの契約が切れ、日本に戻ってきた廣田瑞人は戦極で北岡に勝ち、DREAMの大晦日イベントで青木真也と対戦している。バンタム級王座決定戦・大沢ケンジvs.大塚隆史はDREAMバンタム級GP1回戦のリマッチだ。大沢はいち早く海外に目を向け、UFC傘下の団体WECに出場していたこともある。
選手によって、とらえ方が異なるDEEPという舞台。
会場は後楽園ホール。CSやネットでの中継はあるが地上波コンテンツではない。でも、日本最高峰の試合が行なわれている。そんなDEEPは、選手たちにとって分岐点でもある。
若い選手にとっては、DEEPでトップになることは海外への通行手形という意味を持つ。白星の数、試合内容に加えベルトという勲章は、UFCなど海外のメジャー団体への大きなアピールになるのだ。
一方、メジャーや海外をすでに経験したベテランにとってのDEEPは、最後のチャレンジの場になることが多い。ここでもう一花咲かせることができるかどうかの闘いだ。ここで勝てなければ、つまり国内の最前線から脱落すれば、もう先はない。そういう厳しい“見切り”を自分に迫られる場所だということ。
37歳の大沢は、10歳年下の大塚に敗れると、マイクを握って現役引退を表明した。かつて世界の舞台を味わった大沢は、日本人選手に負けることを“限界”として捉えたのだろう。まして彼はジムを経営しており、指導者としても多忙な日々を過ごしている。