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ボンズの球界復帰で薬物問題が再燃。
禁止薬物と技術の継承、そして殿堂。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2014/03/22 10:40

ボンズの球界復帰で薬物問題が再燃。禁止薬物と技術の継承、そして殿堂。<Number Web> photograph by Getty Images

古巣ジャイアンツのキャンプで臨時打撃コーチとして、選手たちに指導するバリー・ボンズ(写真中央)。薬物疑惑のために殿堂入りが難しい中で、臨時とはいえ、球界に復帰を果たし、今後の動向が注目される。

実績は申し分ないが、殿堂入りの投票は低調。

 もちろん彼の実績が申し分ないものであることは、疑いようのない事実だ。

 MLB関係者やメディア関係者が頻繁に利用している「Baseball-Reference.com」では、殿堂入りに関するある指標をまとめている。過去の殿堂入り選手たちの実績の平均を50とし、各選手の実績を殿堂入りの視点から数値化したものだ。

 それによると、今年殿堂入りを果たしたグレッグ・マダックス氏が70、トム・グラビン氏が52、フランク・トーマス氏が60だったのに対し、ボンズは3人を上回る76を叩きだしている。だがボンズの発言に対し、多くの人々が同意していないのが実情だ。

 昨年、殿堂入りの資格を得たボンズ。しかし昨年の投票は36.2%、そして今年は34.7%と、殿堂入りの条件である得票率75%をはるかに下回っている。

 この状況では彼の殿堂入りはほぼ不可能だと言っていい。しかし、この結果に対して、筆者の中では少なからず、腑に落ちないもやもやが続いている。

名前のあがらなかった選手は本当に潔白なのか。

 何度も論じられていることだが、かつてメジャーリーグには“ステロイド時代”と呼ばれる暗い過去があり、数々のスキャンダルが繰り広げられてきた。そして、その時代の象徴的存在だったのがボンズだった。

 確かにボンズはステロイドの使用を認めたが、個人トレーナーから促されて使用したものが結果的に禁止薬物だっただけで「自分の意志で使用してはいない」と主張し続け、現在に至っている(これは連邦大陪審から偽証罪に問われて起訴されたが、結局無効になっている)。

 誤解を招きかねないので先に言っておくが、たとえどのような事情があったにせよ禁止薬物の使用が明らかになっている以上、ボンズに非があるのは間違いない。

 ただ世間の風潮が、“スキャンダルを起こしていない選手=禁止薬物を使用していない”となっていることには違和感を覚えざるを得ない。

【次ページ】 2007年に出された『ミッチェル・レポート』。

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