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カノはバットに加え、口も出す!
低迷マリナーズの「マスト・ウィン」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2014/03/24 10:40
キャンプ、オープン戦でもチームで最大の声援を集めたカノ。勝者のマインドを持つベテランが、勝利を忘れたチームを変えることができるのか。
チームを強化する方法のMLBでの「流行り廃り」。
メジャーリーグの強化方法にも「流行り廃り(はやりすたり)」がある。
2003年はひとつの区切りとなった年で、マイケル・ルイスの「マネーボール」が出版されて、出塁率が極端に重視されるようになった。
アスレチックスは埋もれていた指標に注目することで、他の球団からは評価されていない「格安」の選手と契約して安定した結果を残した。それ以来、「格安選手」探しが流行したが、情報がいきわたれば当然、限界が来る。
その後にやってきたのが「ホーム・グローウン」の時代。ドラフトで獲得した選手をマイナーで大切に育てて戦力にしていく、極めて真っ当な方向性だ。
マリナーズも若手を積極的に起用して浮上を図ってきたのだが、なかなか結果に結びつかず、負けが込んできて観客動員も減ってきた。
すぐにでも結果が欲しい場合の方法は、ただひとつ、フリーエージェントとなった大物を獲得することである。
打撃不振に苦しむマリナーズにとっては、その答えがカノだった。
方針転換と大きな買い物には、責任が伴う。
大いなる方針転換だから、獲得を決断した球団社長、ジェネラル・マネージャーには大きな責任が伴う。
ロビンソン・カノという大きな買い物をしたマリナーズにとっては、スタートダッシュを成功させ、シアトルに野球の熱気を呼び戻すことが必要だ。
スプリング・トレーニングを取材した感触では、チームは上向くのは間違いないとは思う。しかし、アメリカン・リーグ西地区にはアスレチックス、レンジャーズ、そして巻き返しを狙うエンジェルスもいる。
開幕すると、ロードでエンジェルス、そしてアスレチックスといきなり戦い、その後はホームに戻ってまたエンジェルス、アスレチックスと対戦する。
3月31日から4月13日まで、しめて12試合。ここを勝ち越すようだと、マリナーズは面白い存在になる。