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カノはバットに加え、口も出す!
低迷マリナーズの「マスト・ウィン」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2014/03/24 10:40
キャンプ、オープン戦でもチームで最大の声援を集めたカノ。勝者のマインドを持つベテランが、勝利を忘れたチームを変えることができるのか。
メジャーリーグのスプリング・トレーニング、シアトル・マリナーズの雰囲気はとてもよかった。
私が取材した3月上旬は指を怪我した岩隈久志はボールを握らず、タオルスローに終始していたのは残念だったが、チーム全体として見れば、監督がムードメーカーのロイド・マクレンドンに代わり、長期低迷はしているが、前向きなムードが漂っていた。
そして、チームにリーダーがやってきた。
フリーエージェントでマリナーズと10年契約を結んだロビンソン・カノである。
カノは古巣のヤンキースからの7年契約を蹴って、シアトルを選んだ。
ヤンキースは、今季限りでデレク・ジーターが引退し、もしもカノが残っていれば来年からは「チームの顔」になるはずだったが、カノはニューヨークを離れた。
驚いたのは、ヤンキース時代と違い、マリナーズのカノはとても気さくなことだ。インタビューのリクエストを出しておいたら、こちらが迎えに行かずとも、
「もう、出来るよ」
と自分から来てくれた。
チームのために、編成にまで積極発言するカノ。
アメリカのメディアからは「お金でシアトルを選んだ」と見られることも多いが、「お金じゃなく、自分の力でチームを浮上させようと思って選んだんだ」と力説。加えてチームの強化についても積極的に発言するようになってきた。
「自分ひとりのバットだけじゃ無理だ。勝つためには、特に右のバッターが必要だ」
球団へのリクエストである。まさかカノから、こんな発言が飛び出してくるとは思わなかった。
それでもスプリング・トレーニングでのカノはリラックスしており、新監督同様、チームのムード作りにひと役買っている。
カノとマリナーズの契約は、10年でおよそ240億円にのぼる。
カノはいま31歳なので、40歳近くなってくると、契約と見合う働きが出来るかどうかは疑問符がつくが、向こう2、3年は主軸打者として活躍するだろう。
カノの契約は、今季のマリナーズが「マスト・ウィン」の状況に置かれていることを示唆している。2001年以来、ポストシーズンに進出していないから、球団の経営陣も必死なのだ。