Jをめぐる冒険BACK NUMBER
FC東京のフィッカデンティ新監督は、
ザックによく似た“リアリスト”?
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2014/03/12 11:30
FC東京の監督として、世界でも異色といわれるJリーグの戦いを学習しているフィッカデンティ監督。戦力は揃っている。イタリア人特有のリアリズムが、チームを変えるか。
エドゥーの前線での存在感を生かす、東と三田。
昨シーズン、FC東京のトップスコアラーは、17ゴールを奪った渡邉千真だった。得点ランク7位の彼を右ウイングに移してまでセンターフォワードに据えるのだから、エドゥーへの期待の高さと、その実力がうかがい知れる。
甲府戦では待望の初ゴールを奪ったが、それ以上に目を奪われたのは、前線での存在感と身体の強さ、ボールをキープする際の懐の深さだ。エドゥーのポストワークや、彼がマークを引き付けて空けたスペースを生かせれば、攻撃の厚みと迫力はさらに増すはずだ。その点でカギを握るのが、インサイドハーフになる。
インサイドハーフは、フィッカデンティ監督の戦術上、大きなタスクを担う重要なポジションだ。現在は東が右インサイドハーフを、明治大から加入して2年目の三田啓貴が左を務めている。右肩の関節を脱臼して出遅れた米本も、そこに割って入ってくるはずだ。
東京の試合を見ると、インサイドハーフの行動範囲の広さに驚かされるに違いない。タッチライン際でボール刈りに参加したかと思えば、中央に絞ってアンカーの高橋とボランチのような関係を築く。まるで伸縮自在のゴムのように、勢い良く中央とサイドを行き来する。
それに加え、攻撃に移ればエドゥーのサポートに入り、ゴール前へ飛び出していく役割も求められる。まるで、サイドハーフ、ボランチ、トップ下の3役をこなしているかのようなのだ。
昨シーズンの「脆さ」を克服するために。
彼らを支える高橋は「大変なポジションだと思う」と労うが、柏戦でエドゥーのポストプレーをゴールにつなげた三田は、「トップ下、ボランチ、サイドをやって来た自分には打ってつけのポジション。もっとゴールを決められそうなイメージがある」と意気込む。
昨シーズンの東京は、勢い付いたときは手がつけられないほど強く、また魅力的なサッカーを見せたが、いったん歯車が狂うと、あっけなく敗れることが多かった。
だが今シーズンは守備の約束事が積み重ねられ、「立ち返る場所」ができた。期待の新エースも「コンディションとコンビネーションはさらに上がっていく。そうなれば、もっと良いプレーができる」と自信を覗かせる。