Jをめぐる冒険BACK NUMBER
FC東京のフィッカデンティ新監督は、
ザックによく似た“リアリスト”?
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2014/03/12 11:30
FC東京の監督として、世界でも異色といわれるJリーグの戦いを学習しているフィッカデンティ監督。戦力は揃っている。イタリア人特有のリアリズムが、チームを変えるか。
「美しいサッカーで味スタを満員にしたいんだ」というのが口癖だった前任者ポポヴィッチ前監督(現C大阪監督)が典型的なロマンチストなのに対して、守備戦術の徹底からチーム作りを始めた後任者はリアリストだと言えるだろう。今シーズンからFC東京の指揮を執るフィッカデンティ監督のことだ。
FC東京は昨年、権田修一、高橋秀人、森重真人、徳永悠平、東慶悟の5人を日本代表に送り込んだ。加えてチームには、ロンドン五輪バックアップメンバーの米本拓司、'12年に代表候補になった太田宏介、代表歴のある石川直宏、渡邉千真、平山相太らも在籍している。
そんな他クラブも羨む陣容を誇りながらも、リーグタイトルから程遠い8位でフィニッシュ。「今季こそ」と悲願を成就すべく招聘したのが、Jリーグ史上初のイタリア人指揮官だった。
Jリーグは全くの初体験。しかし大の親日家。
今シーズンのJ1で新監督を迎え入れたのは、18チーム中5チームである。名古屋、大宮、C大阪、仙台、そして東京だ。そのうち、Jリーグでの監督経験がないのは、仙台のアーノルド監督とフィッカデンティ監督のふたり。アーノルド監督は現役時代の2年を広島で過ごしているから、Jリーグと関わりがなかったのは、フィッカデンティ監督だけということになる。
とはいえ、日本やJリーグの知識がまったくなかったわけではない。それどころか、同胞であるザッケローニ日本代表監督を上回るほどの大の親日家。これまで観光目的で何度も日本を訪れ「紅葉が散っていく一瞬の美しさに、感動を覚えたよ」と微笑む。
イタリアのチェゼーナを率いていた頃にはFC東京の試合を視察し、2010年夏に長友佑都を獲得している。今回の来日前も昨季のFC東京の試合はすべてチェックし、チームの傾向を分析済みだ。
沖縄での1次キャンプでは、さっそく守備戦術の指導を行ない、ポジショニングや動き方に関する細かい指示の声を響かせた。