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ソチで考えた「世代交代」の功罪。
ベテランを“見切る”のは誰か。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2014/02/25 16:30

ソチで考えた「世代交代」の功罪。ベテランを“見切る”のは誰か。<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

5度目の五輪で4位入賞の上村愛子。悲願のメダルには届かなかったが「全力で滑れた」と晴れ晴れとした表情を見せた。

 2月23日をもって閉幕したソチ五輪で、日本選手団は8つのメダルを獲得した。

 一方ではもちろん、メダルには手が届かなかった選手たちがいる。たくさんいる。

 それぞれに世界のトップを、上位を目指して取り組み、大舞台に立った。

 夏の競技もそうだが冬の競技の場合、競技を続ける費用をいかに捻出するか、苦労してきた選手はより多いように思う。

 オリンピック出場を目指すならば、国際大会への参加や合宿は欠かせない。特に雪上競技の場合、練習できる場所を求めてどうしても海外へ出向く機会が多くなる。用具代もばかにならない。

 海外へ出向く期間が長いから、定職に就くことは困難だ。アイスホッケー女子日本代表が、ピザ屋やジムのアルバイトなどで競技生活を支えてきたのは広く知られるところだ。

 ソチ五輪のリュージュ代表に、金山英勢という選手がいる。日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟の強化費不足の問題から、海外遠征に行くにしてもコーチすら不在で一人で転戦し、自身で手配などを行ない、海外チームに参加させてもらって練習するなどしてきた。自身の遠征費用もまた、大部分を自ら工面しながら続けてきた。

企業の支援、家族の支援で五輪にたどり着いた。

 支援先を探してもみつからない。支援を呼びかけてオーディションに参加したこともある。

「自分の活動もそうですが、自分が打ち込んできたリュージュを知ってもらうためにも、活動を続けて、もっと成績を残せるようになりたいんです」

 金山はそう語っていた。面識を得たメディアの人にも欠かさず季節の挨拶と活動状況の報告を送り、活動への理解を訴えてきた。

 ようやく支援者がみつかったのは、昨年も後半になってからだ。家族の支援も受けながら競技を続け、オリンピックへとたどり着いた。

 そうした選手は、金山にかぎらない。

 支援先を得て、あるいはスポンサーを得て活動している選手も、もちろん少なからずいる。そして各所属団体などから支給される強化費はランク付けされているが、高いグレードにある選手ほど、多くの強化費を得られる。

【次ページ】 団体の支援だけでは強化費もままならず……。

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