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葛西、竹内らベテランが輝いたソチ。
「世代交代」はどうあるべきか。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/02/24 16:30
41歳にして銀メダルを獲得した葛西紀明は、伸びしろを疑問視され世代交代を強引におし進めようとする圧力に抗ってきた。そして結果によって自らの価値を改めて示した。
開会式の前日、2月6日から競技が始まったソチ五輪。23日の閉会式で、全てのプログラムが終わりを迎えた。
ソチ五輪でいろいろな競技の試合を観ているうちに、思い浮かんだ言葉は「世代交代」だった。でも、世代交代が進んだという意味で思い浮かべたわけではない。まったく別の意味合いでだ。
今大会では、オリンピックに何度も出場してきた選手の姿が印象的だった。
7度目の出場で念願の個人種目でのメダルとなるラージヒル銀メダル、さらに団体でも銅メダルを獲得したジャンプの葛西紀明、4度目のオリンピックでついに銀メダルを手にした竹内智香。メダルには届かなかったが、渾身の滑りを見せて4位入賞を果たした上村愛子も5度の出場を数える。しかも5度すべてでの入賞だ。
彼らの今回の活躍には、長い競技生活と、そこから得てきた経験が間違いなく反映されていた。
葛西、竹内、上村が直面していた苦難と批判。
例えば葛西は2000年代、世界上位を相手に苦戦が続く中で試行錯誤をつづけてきた。そしてゆっくりと、今日の独特の、手を広げたフォームを完成していった。
竹内は、より強くなりたいと海外のチームでの練習を希望し、門前払いにあいながらも強豪スイスのナショナルチームへの参加を許され、技術やメンタルを鍛えてきた。後にスイスでの強化の限界を悟り、国内に戻ってトレーニング漬けの日々を送った。そしてオリンピックでも、苦い思いを味わってきた。2010年のバンクーバー五輪でコースアウトしての13位は、勝負をかけて臨んでの結果だけに、悔しさが募った。
「4回もオリンピックを経験しないと、ここまで来ることはできませんでした」
竹内は言う。まさに経験を積み重ねてきたからこそ、今日がある。
上村もまた1998年の長野五輪以来、オリンピックに限らず、シーズンを毎年過ごす中での喜怒哀楽があって「達成感でいっぱいです」という滑りに結びついている。
共通するのは、繰り返すが、競技生活を長年続けてきて得られた財産があってのソチだったことだ。
彼らの活躍に、あらためて思い出すことがある。競技生活の長い選手が批判にさらされたこともあったことだ。