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葛西、竹内らベテランが輝いたソチ。
「世代交代」はどうあるべきか。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/02/24 16:30
41歳にして銀メダルを獲得した葛西紀明は、伸びしろを疑問視され世代交代を強引におし進めようとする圧力に抗ってきた。そして結果によって自らの価値を改めて示した。
レジェンド葛西も「肩をたたかれ」ていた。
葛西は、メダルを取った今でこそ7度もの五輪出場、41歳でなお第一線であることも賞賛を浴びている。
だが、すこし前には「肩をたたかれた」こともあった。
ジャンプの場合、2002年のソルトレイクシティ五輪でメダルなしに終わったあと、「若い選手の育成を」という声が出るようになった。
そして2006年のトリノ五輪のあとになるとジャンプをはじめに、世代交代への圧力が吹き荒れた。
トリノでは、大会全体を通して日本選手団のメダルは荒川静香の金メダルのみに終わった。不振の原因のひとつとして、ジャンプをはじめベテラン選手が多いことがあげられたのだ。
国際大会の代表に若い選手を派遣し経験を積ませるべきだという声も起きた。
さらには、
「オリンピックに2回出てもだめなら、3回目は出さないとか、若い選手に経験を積ませるのはどうか」
トリノ五輪ののちに開かれた日本オリンピック委員会の会議の席上で、出席した首相経験者がそう主張したことを報じる記事もあった。
そもそも、ジャンプの前ヘッドコーチ自体が、ベテランを軽視する姿勢があった。
「合宿とかで必死に頑張って、認めさせようと思いましたね」
葛西は当時をこう振り返っている。
世代交代は、若い選手が実力で追い抜いてこそ。
今日まで長く日本代表として活躍してきた彼らは、そうした空気をも実力でもってはねのけてきた。大会で代表にふさわしい成績を残すことで、合宿での頑張りで、認めさせてきたのだ。
選手それぞれに、そうした過程があってソチでの輝きがある。もし、上に記したような、ほんとうに五輪の出場回数制限が行なわれていれば、現在の彼らの姿はない。
そこから導き出される答えは、世代交代は、決して意図的に行なわれるべきものではないということだ。世代交代は、あくまでも若い選手が実力で追い抜いたときに起きる現象であって、自動的に若い選手に席が用意されるわけではないということだ。むろん、次世代の育成が重要なのは当然のことではある。