スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「氷」のオランダ、「雪」のノルウェー。
メダル内訳で考える、日本の針路。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2014/02/24 11:30
ソチ五輪で、日本勢唯一の金メダルを獲得した男子フィギュアスケートシングルの羽生結弦。男子フィギュアで、欧米以外の選手が金メダルを獲得するのは史上初のことだ。
110個中107個がスピードスケートのオランダ。
オランダは冬のオリンピックで、ソチを含めて110個のメダルを獲得しているが、スピードスケート以外のメダルは、フィギュアスケートの2個と(1960年のスコーバレー大会と、1964年のインスブルック大会)、今回のショートトラックの1個だけ。
つまり、107個がスピードスケートから量産されてきたのだ!
素質の高い選手が、スピードスケートに集まる構造が見えてくる。
一方、ノルウェーは冬のオリンピックで306個のメダルを獲得してきた。ウィンタースポーツの裾野、取り組み方が違うのだ。なんといってもメダルを量産してきたのはノルディックのクロスカントリーでソチを含めると96個のメダルを取ってきた。
クロカンこそ、ノルウェーの花形競技なのである。
実はクロスカントリーに次ぐのがスピードスケートで、80個のメダルを獲得してきたが今回はゼロに終わった。日本だけではない。オランダがメダルをかっさらっていったことは、ヨーロッパのスピードスケート列強にも衝撃を与えている。
日本のウィンタースポーツの裾野は広がるか。
一方、日本はフィギュアスケートという花形競技から、クラシカルなノルディック複合、ジャンプ、そしてエクストリーム系のスノーボードとフリースタイルスキーでメダルを獲得した。
雪でも、氷でもメダルを獲得しているのは、様々なスポーツが楽しまれている証拠である。選択肢が広いことは豊かさを計るひとつの指標だし、やはり人口が多いことが多様性につながっているだろう。
ノルウェーやオランダのように、絶対的な柱となる競技がないのがややさびしい気もするが、それが日本の現実だ。
ウィンタースポーツの競技人口、そして雪や氷を楽しむ環境が昭和の時代から比べると減っているのは間違いないが、ソチの日本選手団の活躍によって、日本のウィンタースポーツの裾野が広がることを祈ってやまない。