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松山英樹はマッチプレーが苦手?
「リスクと報酬」で考えるその魅力。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2014/02/20 10:40

松山英樹はマッチプレーが苦手?「リスクと報酬」で考えるその魅力。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

2008年のWGCアクセンチュアマッチプレー選手権を盛り上げたタイガー・ウッズは、今季の大会は不参加を表明した。

必ずしもスター選手が勝ちあがれるとは限らない。

 日本プロマッチプレー選手権は、前年度優勝者と賞金ランク上位31人の合計32人が出場する4日間大会だった。会場からは日々、敗者が姿を消していく。スター選手同士のぶつかり合いとなれば、注目度は高まるが、必ずしもスター選手が勝ちあがるとは限らない。

 最終日になると、行なわれるのは決勝戦と3位決定戦の2試合だけで、コースにいるプロはわずかに4人となる。残った選手が伏兵だらけになれば、話題は小さくなる。「事前の期待にマッチしなかった年が何年かあると、スポンサー様には『存続はどうかな?』と思われてしまいがちです。ちょうど(試合が消滅した)当時は、日本全体が経済的にもすごく落ち込んでいた時期で、判断も慎重だった」という。

 スポンサーやファンを納得させる上で、テレビ放送の出来栄えは重要だ。だが、番組制作にも難しさがある。

 マッチプレーは決着がどこでつくか分からず、そのシーンの撮影のためには、カメラやスタッフが比較的多く必要になる。一方で、18ホールマッチであれば、最速10ホール目で決着がついてしまう。72ホールが消化されるストロークプレーよりも、映像素材の確保が不透明で、番組作りに大きな影響がある。

タイガーの圧倒的な強さも、マッチプレーでは仇に。

 アクセンチュアマッチプレーでは過去にこんなことがあった。2008年大会、36ホールで争われる決勝戦でタイガー・ウッズは、スチュワート・シンクを7ホールを残して8ホール差をつける大差で破った。ウッズが圧倒的な強さを見せつけたわけだが、7ホールを残した段階でプレーが終わったことで、放送局側の思惑よりも1時間40分も早く試合が終わってしまったのである。

 松山出場の今大会も、来年からは開催コースが変更され、主催スポンサーが撤退するというニュースを米ゴルフ雑誌が1月に報じ、地元支援者などが“火消し”に躍起になっていた。世界最高峰の大会であっても、運営側が向き合う問題は尽きない。

 とはいえ、マッチプレーにはストロークプレーとは異なる面白みがある。

 日本プロマッチプレーの名勝負として語り継がれているのが'87年大会、尾崎将司と高橋勝成の決勝戦。終盤に追いつかれた高橋が、延長戦となった37ホール目でジャンボを振り切った死闘は8時間にも及び、のちにVHSビデオが一般発売されたほどだ。高橋にはその後「ジャンボ・キラー」の異名が付いた。

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