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技術勝負なら日本は、葛西は強い!
ルール変更が生んだ“平等”な戦場。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2014/02/17 11:05
メダルセレモニーで、銀メダルを手に笑顔を見せた葛西紀明。金メダルをとりたい、と次回への意欲を早くも見せた。
2月15日(現地時間)、ジャンプ・ラージヒルで葛西紀明が銀メダルを獲得した。
日本ジャンプ界にとって、1998年の長野五輪以来、16年ぶりとなるメダルである。
実は長野五輪ラージヒル団体金メダルなど数々の活躍を見せてきた原田雅彦氏が、大会を前にこう占っていた。
「日本はノーマルヒル、ラージヒル、団体、どの種目でもメダルを取れる可能性がありますね」
その根拠としたのは、ルール改正が一段落したことにあった。
スキー競技は、用具にも左右されるスポーツである。ジャンプもそうだ。そして用具に関しても、ルール改正は頻繁に行なわれてきた。長野五輪後のスキー板の長さに関する変更はよく知られているところかもしれない。そしてジャンプスーツについても、ルールは変わり、それは競技にも影響を及ぼしてきた。
スーツの仕様変更に、日本勢は遅れをとった。
今日では細かく仕様が規定されているスーツだが、以前は、それほど細かな決まりはなかった。日本男子が団体優勝するなど大活躍した長野五輪の行なわれた1997-1998年シーズンは、生地の厚さが8ミリまでとされていたが、その他に関しては、今日からすれば、特段、細かな制約があったわけではない。
あれこれいじる裁量があることから、さまざまな工夫が海外の強豪国で進められてきた。股の下を緩めに作り、風を受けやすくしたりするのもそうだし、裁断や縫製などの工夫で、いかに背中側に空気を溜め込むかといった試みもされた。
'03-'04年シーズンには統一ルールが作られたものの、やはり、工夫の余地はまだまだあった。
こうした変更の中で、日本は苦戦した。変更への対応において、一歩ずつ遅れを取り続けたからだ。資金であったりメーカーであったり、海外の強豪との、置かれている競技環境の違いがそこにあった。