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カーリング小笠原の戦略は「男前」!?
現在1勝1敗、“ケンカ腰”で大一番へ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2014/02/12 16:30
船山弓枝、小笠原歩(左)のベテランコンビが立てる戦略は超攻撃的。彼女たちが、声援に押されて攻撃に出てくるロシアにどう対峙するのか見ものだ。
吉田の2試合分の経験値がリードとして活きるか。
小野寺が戻った場合、吉田はリードに入る見込み。3戦目以降で注目して欲しいのは、ハウスの手前に置かれた相手ガードを外すショットの精度だ。
これまでは残念ながら、狙いが逸れてスルーしたり、相手のガードは外したものの、自分の石がそのまま残ってしまうケースが見受けられた。そのミスに乗じて相手が得点機を演出したケースが目立ったのだ。
ただしデンマーク戦を見ると、攻めのショットはうまい。スキップの経験者だけに、アグレッシブな性格なのだと思う。
リードとなれば、攻めに入る布石としての「ドロー」が多くなるので、ガードを外すといった難易度の高いショットの要求は少なくなる。
2試合を戦った吉田、そしてセカンドの小野寺までにうまく布石を打てれば、船山、小笠原に得点につながるショットが期待できるようになる。
吉田の2試合分の経験値に期待したいところだ。
20秒の無酸素運動!スウィーピングは「重労働」。
そしてスウィーピングは「重労働」だ。最大、20秒間の無酸素運動を強いられる。素人カーラーの私など、本当に具合が悪くなってしまったことがある。
韓国戦からデンマーク戦にかけて、そのスウィーピングに関して、日本には大きな進歩があった。
韓国戦、船山と小笠原のストーンが短かったり、ガードに当たってしまうことが見受けられた。それが韓国の得点につながったシーンもあった。
これは投げ手の責任とばかりは言い切れず、スウィーピングの判断、スウィープそのもののパワーといった「総合力」の結果なのである。
実際、私には「パワーのある小野寺がいればなあ……」と思った瞬間があった。12月のオリンピック最終予選では、小野寺のスウィープが効いていたからだ。
韓国戦の重要な場面で、小笠原、船山のラインのコールと、スウィーパーの判断が合致していれば、勝敗が入れ替わった可能性は十分にあった。それだけに惜しまれる敗戦だったのである。
しかし、韓国戦からおよそ7時間後に行われたデンマーク戦では、スウィーピングでハウスまで石を持ってきた場面もあった。短時間で修正がなされていたのだ。
ここに小野寺が帰ってくる。インフルエンザが治ったばかりでは体力的な不安もあるが、「パワー」と「コミュニケーション」が戻ってくれば、よりショットの精度が増す。ようやく日本のオリンピックが始まるという感じだ。