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「団結力」で閉塞感を反動に変える。
ザックが惨敗の遠征を静観した理由。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/01/13 08:11

「団結力」で閉塞感を反動に変える。ザックが惨敗の遠征を静観した理由。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

批判を受けることもありながら、W杯へ向けて着々と手を打ってきたザッケローニ。全ての審判が下る本大会まで、あと半年だ。

「課題を浮き彫りにするため」の、敢えての静観。

 セルビア戦と同じメンバーでベラルーシ戦に臨んだのも、合点がいかなった。これだと控え選手のモチベーションが下がってしまうし、一つにはなりにくい。

 指揮官の答えはこうだった。

「セルビア戦は前線でのインテンシティー(プレー強度)こそ出せなかったが、そこまで悪い内容ではなかった。だが、ベラルーシ戦は違う。個人プレーに走りすぎてしまって、悪い部分だけが出てしまった。チームとして戦えていなかった。

 メンバーを入れ替えなかったのは、試合に対する入り方、アプローチの仕方というのをテーマに掲げていたので、次のベラルーシ戦でどう高めてくれるのかを確かめておきたかったからだ。だが期待したようなレスポンスがなかったのは、残念でならなかった。私はこのベラルーシ戦の試合内容をしっかりと受け止めたうえで、11月の遠征でメンバーを変えるという決断に至った」

 つまり、ここでは敢えて静観する姿勢を取ることにした。「課題を浮き彫りにするため」と付け加えもした。

 そして、オランダ、ベルギーと対戦する11月の欧州遠征で彼は動くのである。

自分たちのサッカー、目指すべきモデルを伝える。

 彼は選手たちにDVDを渡したという。最終予選の“ロケットスタート”になったあのオマーン戦、ヨルダン戦、そしてコンフェデのイタリア戦という3試合が収録されていた。そして熱い語りで、組織で戦う重要性を訴えたという。

 この意図について尋ねると、ザッケローニは少し口調を強めた。

「これらの試合の共通項が何かと言えば、攻守にわたって勇気を持ち、バランスを保ちながら主導権を握るという強い意志があること。チーム全体に意思疎通があり、チームとしてまとまってプレーできていることだ。

 提示した試合はあくまでスタート地点を示しているに過ぎない。ただ、私は選手たちに、これが我々のサッカーであり、W杯でやるべきモデルなんだ、と強調して伝えた。これをブラッシュアップすることが今から我々のやるべきことなんだ、ともね」

 チームにも危機感があるからこそ、選手たちの胸に言葉がスッと入りやすかったのかもしれない。メンバーの入れ替えも刺激材料になったに違いない。

 チームは一つになった。オランダには怒涛の追い上げで2点差を追いつき、W杯シード国のベルギーからは3点をもぎ取って勝利した。1カ月前とはまるで違う姿だった。

【次ページ】 閉塞感を反動に使って、原点に立ち戻る。

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