日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
「団結力」で閉塞感を反動に変える。
ザックが惨敗の遠征を静観した理由。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/01/13 08:11
批判を受けることもありながら、W杯へ向けて着々と手を打ってきたザッケローニ。全ての審判が下る本大会まで、あと半年だ。
閉塞感を反動に使って、原点に立ち戻る。
すべてが監督の思惑どおりなどではないだろうし、代表への帯同取材を続けている筆者もチームの閉塞感というものを少なからずとも感じていた。だが、ザッケローニはそれを反動に使った。「団結力」という金科玉条を大事にしてきたからこそ、ここぞのタイミングでチームを原点に立ち戻らせることができたのではあるまいか。
指揮官は言った。
「チームとしてのプレーを意識することによって、インテンシティーはより高まるというものだ。パススピード、プレースピード、精度も高まったと感じている」と――。
組織で戦う意識があって初めて日本の特長が活きる。これが、ザッケローニの揺るぎない哲学である。
2010年、ザッケローニはテレビの前で日本を応援していた。
あれは、2010年の南アフリカW杯。
イタリアにいたザッケローニは、テレビの前で日本を応援していた。そのころはまだ、縁もゆかりもない。大会前、対戦国のスカウティング、情報収集などで欧州を回っていた岡田武史と交流を持ったこともあるが、一人のサッカー人として純粋に心を動かされていた。
いつのことだったか。彼が目を輝かせて話してくれたことがある。
「決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦を、私はレストランで友人と一緒に観ていたんだ。PK戦で敗れてしまったとき、私ばかりでなく、その友人までガックリして、残念がっていたほどだよ。
彼らの戦いは私のなかで強く印象に残っている。全員がチームのために一つになって勝利に向かっていくという姿勢が、何よりも素晴らしかった。日本チームの魅力は何だと聞かれたら、一番は『まとまる力』だよ。これはとてもとても素晴らしい魅力だ」
世界を魅了できる力が、日本にはある。
ザッケローニは強く強く、そう信じている。