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<箱根駅伝・駒大のエースに聞く> 窪田忍 「最後の箱根駅伝はマラソンランナーへの大切な通過点です」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byShunsuke Mizukami
posted2013/12/30 08:00
大八木監督に「“強さ”を身につけろ」と言われた。
「失敗したし、悔しかったんですけど、やっぱりマラソンがやりたいってレースが終わってすぐに思ったんです。本当に、すぐです。難しいけど、だからこそ、そのマラソンで成功したいなって。それに、マラソンが長距離選手にとって一番“上”というイメージもあるじゃないですか(笑)」
“平成の常勝軍団”と呼ばれる駒大で多くの選手を指導してきた大八木監督も、窪田にマラソンランナーとしての素質を感じている。
「箱根よりも、その後のことを見据えた育て方をしてくださっています。監督からは、まだ脚が弱いから、走り込んで走り込んで、まず最低限の“強さ”を身につけろと言われています。40km走をこなしたり、月間の走行距離をあげていったり。びわ湖前の練習を思い返すと、量も質も足りませんでしたね」
「藤田敦史さんの後半の走りに憧れるんです」
マラソンランナーとして憧れるのは、大学の先輩でもある藤田敦史だ。
4月に現役を引退した藤田はたびたび母校を訪れ、後輩たちを指導している。その中で大きな影響を受けているという。
「いまビデオを見返しても、藤田さんの後半の走りに憧れるんです。国内のレースで2時間6分台を出したのももちろんですけど、ラスト5kmでもう1回グッとペースをあげていけるのがすごい。藤田さんも僕と同じでスピードがあるほうじゃなくて、1万mのベストも28分台。でもマラソンであれだけ強かった。藤田さんの練習メニューを見たり、聞いたりするんですけど、驚きます。量も、質も凄すぎる。『本当にこんなにやってたんだ』って。でも、これだけの練習をやっていたから強くなったと実感できるんです。すごいです。本当に」
藤田は大学4年時、びわ湖で2時間10分7秒で走り、瀬古利彦の持つ学生記録を20年ぶりに更新した。窪田は卒業までにもう一度マラソンを走る予定はあるのだろうか。
「走りたいんですけど、またあんな走りをしてしまったら元も子もない。成功するために何をすべきか考え、1カ月や2カ月という短い期間ではなくて、1年、2年という長い目で準備をしたいと思っています」
将来をじっくり見据えるランナーの言葉に触れ、つい安易な質問をしてしまった。