Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
<箱根駅伝・駒大のエースに聞く> 窪田忍 「最後の箱根駅伝はマラソンランナーへの大切な通過点です」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byShunsuke Mizukami
posted2013/12/30 08:00
その主将は最後の箱根路にどう挑み、己の未来をどう描くのか。
意外なほど和やかな表情で胸中を明かしてくれた。
「走っている最中も冷静になれずに、もう『どうしようどうしよう、全然身体が動かない』というような状態で。でも『前を追わないといけない』という焦りもあって」
戸塚中継所で表情を歪めながら襷を渡すと、長い時間、肩で呼吸をしながらアスファルトに四つん這いになっていた。しばらくして立ち上がっても、その表情に生気は感じられず、話をきいても涙ながらに「すいません」「わかりません」という言葉がポツリポツリと返ってくるだけだった。
「自分を見失っていたのかもしれません」
この1年、窪田自身は、そして駒澤大学は変わったのか。
「結束ってどういうことなんだろう」とすごく考えた。
「全然違う、と思います。今年のチームのテーマが『原点』と『結束』なんですが、僕自身、去年より『結束ってどういうことなんだろう』ってすごく考えました。甘えになってはいけないというのは変わらないけど、結局はひとりひとりだというか……。難しいんですよね(笑)。選手ひとりひとりが本当の意味で力をつけて、試合で外さない、練習もしっかりやる。そうすることで、あいつにならこの区間を任せられる、あいつが走るなら大丈夫だ、そういう気持ちが生まれて、それが結果として結束になってくる。今はそんなふうに考えてます」
自立の先にある結束を目指すため、窪田は監督の大八木弘明が「下級生にかなり厳しいことを言いますよ」と評するほどの姿勢でチームをまとめてきた。
「練習でも試合でも、誰かが気持ちが入ってない態度をとることはありますよね。それって他人のことだし、見て見ぬふりもできるじゃないですか? 怒る、注意するとかって、言いづらいことでもありますし。でも、今年は主将である自分が言わなければいけないと思ったので、しっかり口に出してきました。去年のチームはそこが少しダメだったなと感じていたのは事実なので」
だが、最後の箱根路に挑む窪田に最大のモチベーションを与えているのは、去年の4年生なのだという。