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満身創痍で賞金王に輝いた松山英樹。
記録づくめの戴冠は“史上最強”か。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/12/02 16:30
史上初、ルーキーイヤーでの賞金王となった松山英樹。怪我に苦しみながらも、池田勇太との競り合いを制して今季4勝目を挙げた。
「史上最強の賞金王」と呼ぶに相応しい記録の数々。
獲得賞金2億107万6781円は、加算対象の国内ツアー13試合、海外メジャー3試合で積み上げた。16試合での2億円到達は史上最速。
しかしアマチュア時代にマスターズで輝き、プロツアーで優勝もした。何も今年になって、彗星のごとく現れた逸材ではない。だから「ルーキー賞金王」という肩書は、史上初の快挙とはいえ、ちょっとピンとこないところもある。
なにせスケールが、それに留まらない。1試合あたりの今季獲得賞金1256万7298円は、尾崎将司が1996年に記録した1233万2161円を抜いて歴代キングの中でトップ。シーズン最終戦・日本シリーズJTカップには、2001年に伊澤利光が記録した年間史上最高の獲得賞金(2億1793万4583円)更新へのチャンスを持つ。
松山英樹は紛れもなく、日本ツアー「史上最強の賞金王」のひとりなのである。
満身創痍で掴んだその賞金王のタイトルに付与されるのは5年間のシード権。その価値は、米ツアーでの戦いに身を投じている松山にとって、実益も兼ねたメリットがある。松山は向こう5年間、日本で一切試合に出なくとも、賞金シードが確保され、米ツアーに専念できる。日本人初のメジャー制覇の可能性を匂わせる逸材が、その舞台で存分に力を蓄えるチャンスに違いない。
日米ツアーの掛け持ちで、松山はボロボロになった。
しかし一方では、国内ツアーに目をやれば、“流出”を嘆く声は大きくなるばかりだ。
思えば昨年末時点では、石川遼の不在によるツアーの人気低下を心配した関係者たちも「石川は夏場までに3、4試合は日本で出場するはずだ」と、高を括っていた。なにせ、石川自身の頭の中にもそんな青写真があった。
だが蓋を開けてみると、開幕序盤から米ツアーのシード確保に悪戦苦闘。秋までに日本でプレーしたのは6月の日本ゴルフツアー選手権だけだった。
松山は確かに日本で賞金王、米国でツアーカード取得という2つの目標を達成した。しかしあれだけ恵まれた体躯がボロボロになったことを考えれば、両ツアーの掛け持ちがいかに困難なものであることか。「アメリカはやっぱり甘くない」。2013年はそう痛感させられたシーズンでもあった。