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<2014年の米ツアーを占う> 石川遼&松山英樹 「王者へのステップ」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2013/11/28 06:01
タイトルに挑む2人は今季いかなる戦いを見せてくれるのか。
「2年目のジンクス」という言葉がある。1年目に活躍し、大きな注目を集めながら、2年目は一転して急降下するという現象は野球界や芸能界でよく見られるものらしい。しかし、ゴルフの世界では、とりわけ米ツアーに挑む選手たちの戦いの世界では、「2年目のジンクス」は当てはまらない。
これまで米ツアーに本格参戦した日本人選手たちの大半は1年目でシード落ちして日本へ帰っていった。だが1年目に生き残った数少ないサバイバル組は2年目に急降下することなく、3年目、4年目へと進んでいった。最初の年に滑り落ちてしまう選手のほうが多い米ツアーの舞台で、晴れて2年目を迎えることができたら、それはすでに成功の証。近年では尾崎直道、丸山茂樹、田中秀道、今田竜二。そして今、このサバイバル組に石川遼が加わった。彼らはみな1年目を乗り越えたからこそ、米ツアーにおける「その後」があった。
そう、ジンクスなどという得体の知れないものの話ではない。ゴルフの世界、米ツアーという舞台において、運命の分かれ目になるのは2年目ではない。生き残れるか、落ちるか。2つに1つの厳しい現実。その瀬戸際で戦う1年目こそが何よりの勝負となる。
松山の躍進、石川の不振が比較された昨季だったが……。
今年。と言っても、10月からすでに新シーズンが開幕している米ツアーでは「昨季」に当たる2013年シーズン。日本では松山英樹の活躍と石川遼の不振が、とかく比較対象の的になった。6月の全米オープンで10位、続く全英オープンで6位に食い込んだ松山は、そのまま米ツアー連戦に挑み、翌シーズンの出場権獲得に猛スピードで近づいていった。一方、序盤から予選落ち続きだった石川が近づいていったのはシード落ちという名の崖っぷち。その間、松山が輝き、石川の表情に苦悩が見て取れたのは紛れもない事実だった。
だが、そのときのその現象だけを見て、彼らに序列を付けたり比べたりしても意味がない。なぜなら、あのときの2人は、同じ舞台に立っていながらも、それぞれの立ち位置は異なっていたからだ。石川は米ツアー正式メンバーとしてフル参戦を開始した1年生だった。つまり彼は「1年目の勝負」の真っ只中にいた。一方の松山は、まだスポット参戦中のノンメンバー。彼が戦っていたのは「1年目の勝負」ではなく、その手前の「事前勝負」のようなもの。
その違いがどれほど多大であったか。それは、経験してみて初めてわかったと石川は振り返った。