スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
メッシのプレースタイルが変わる?
相次ぐ怪我が、最強FWに強いるもの。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2013/11/26 10:30
11月10日のベティス戦、前半途中で交代して冴えない表情のメッシ。
飛び交う原因についての憶測と、神経質な本人。
それにしても、なぜ今年に入りメッシのケガが急増したのだろうか。
その原因を休みなくフル稼働し続けてきた過去数年の代償に求める者もいれば、今夏のオフ中に数々の長距離移動を強いたチャリティーマッチを元凶に挙げる者もいる。中には、メッシは継続的に動かしていないとコンディションを保てないタイプの筋肉の持ち主であり、長期のオフが筋力の低下などの逆効果をもたらした、という意見もある。
当のメッシは「ケガは起こるべくして起こった。その裏に特別な原因などないし、求めても仕方ない」と公にはコメントしているが、これまで代表合流中やオフの間も付きっきりでコンディショニングを担ってきたフィジカルコーチのフアンホ・ブラウを担当から外すなど、実際はかなり神経質になっていることが窺える。また故障個所が両ハムストリングに集中しているのも気になるところだ。
バルセロナは、メッシ不在でも好調を維持している。
そんな中、幸いにも今季のバルセロナはメッシの不調時や不在時にもしっかり結果を出せる強さを身につけてきている。
新加入のネイマールはこれまでメッシに一任していたドリブル突破によるチャンスメイクを担い、エル・クラシコやバルセロナダービーといったビッグゲームではメッシに代わって決定的な役割を果たしてみせた。
また深刻なゴール不足を克服したアレクシス・サンチェス、毎試合ゴールやアシストを積み重ねているセスク・ファブレガスが攻撃面における重要性を増したことにより、メッシの決定力に頼りきりだったフィニッシュの部分も改善されてきている。
こうした攻撃陣の奮闘により、現状チームはリーガ・エスパニョーラで無敗のまま首位を快走し、チャンピオンズリーグも2試合を残して決勝トーナメント進出を決めている。そのため、今後9試合はメッシ不在が続く不測の事態を受けても、ファンやメディアが深刻な危機を煽る様子はない。それはメッシの復活に全てを賭けざるを得なかった昨季終盤とは大きな違いである。