スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
メッシのプレースタイルが変わる?
相次ぐ怪我が、最強FWに強いるもの。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2013/11/26 10:30
11月10日のベティス戦、前半途中で交代して冴えない表情のメッシ。
11月10日に行われたリーガ・エスパニョーラ第13節、ベティス戦の前半20分に今年何度も見られた光景が再び繰り返された。険しい表情を浮かべたリオネル・メッシが、太腿の裏をさすりながら交代を要求したのである。
翌日に行なわれた検査の結果は左太腿裏(大腿二頭筋)の肉離れによる6~8週間の離脱。こうしてメッシはケガ続きだった2013年のプレーに別れを告げた。
元々メッシは瞬発力に優れた多くのアスリートと同じく、頻繁に筋肉系のトラブルに見舞われる選手だった。それが2008年夏に就任したジョゼップ・グアルディオラ監督の下、トレーニングから食事までコンディショニングの管理を徹底すると、その後の4シーズンは一度も筋肉系のトラブルに見舞われることなく、ほぼ全ての公式戦でプレーできるようになった。
そんな鉄人メッシに異変が生じたのは今年の4月2日、チャンピオンズリーグ準々決勝第1戦、パリ・サンジェルマン戦のこと。この試合で右足の大腿二頭筋を痛めた彼は、その後も本調子を取り戻せぬままシーズンを終える。そして丸2カ月の長期休暇を得た今季もプレシーズン中からハムストリングに違和感を覚え、開幕後は僅か3カ月間のうちに3度も同様の故障を繰り返してきた。
昨年までは絶対にやらなかったファウル狙いも。
ちょうど10年前の2003年に16歳でトップチームデビューを果たして以降、メッシが今年ほど頻繁にケガに見舞われたことはなかった。
しかも相次ぐケガの影響により、今季はドリブル時の爆発的な加速やキレが影を潜め、簡単にボールを奪われることが増えている。昨季までは絶対にやらなかったファウル狙いのダイブに逃げるシーンまで見られるのは、フィジカルコンディションの低下だけでなく、精神面の不安定さの表れだろう。
こうしたケガに対する恐怖心はプレーし続ける中で徐々に克服していくしかないのだが、復帰と離脱を繰り返している現状ではそれも叶わない。
そのためこれまで繰り返し「メッシの状態は心配していない」と言い続けてきたヘラルド・マルティーノ監督も、ベティス戦の後には「今季3度目のケガが彼の精神にどう影響するのかは分からない」と不安を覗かせていた。