野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
野球芸術界に殴り込み!
女子大生ユニットの大いなる野望。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2013/11/22 10:30
左から阿良田蓉、吉川愛美、堀岡暦。ポーズは左から宮出、福地、武田勝のモノマネである。
暦「3人の個性が打線のように繋がれば」
――このユニットは、ながさわたかひろ氏から強く影響を受けたとお聞きしましたが。
愛 「はい。すっごく影響を受けました。『ここまでやりきるのか』という芸術に対する執念。球団に挨拶に行って、自分も選手として頑張りますって、毎試合選手と同じように試合と向き合う姿勢……簡単にできるものではありません」
蓉 「尊敬している芸術家の一人です。私も今年、ながさわさんと同じように、ヤクルトの印象的なシーンを描くということをやってみたんですけど、毎試合続けることは本当に難しいということを実感しました。試合によって、特に負けた日なんて描くべきシーンがわからないんです。でもながさわさんは勝っても負けても毎試合続けてきた。チームが好きということだけじゃできない。その上に何かがないとできないことですよ」
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暦 「私達3人がはじめて集まったのも、昨年の夏に神保町で行われた、ながさわさんの個展でした。その展示を見て『私たちも何か動かないといけない』と強く感じました。このユニットがながさわさんから受けた影響は計り知れないです。そもそも私が野球の絵を描き始めたことも、2011年のえのきどいちろうさんと、ながさわたかひろさんのトークショーを聴いたことがきっかけです。『こんな風に野球を考えている人がいるんだ』って圧倒され、感化されました。一人ではとても敵わないですけど、3人の個性が打線のように繋がれば、見えてくるものもあるんじゃないかと思うんです」
蓉「もっと野球を身近に感じるため」
――なるほど。しかし『代打○○○』は、プロ野球で何を表現されようとしているのですか?
蓉 「アメリカにはやっぱりベースボールが生活や文化に根付いていて、芸術の分野でもベースボールは題材として一定の評価を得ています。一方で日本は野球の人気がなくなってきているとずっと言われていますが、日本には日本の生活に根付いてきた、野球文化の歴史があると思うんです。ただ、生活の身近なところに野球があるかといえばそうではない。もっと野球を身近に感じるため、野球を愛でる機会が美術によってできないか。そういったことからそれぞれのフィルターでグラウンドとは違った視点で野球の魅力を捉えられないか。そういう試みなんです」