野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
野球芸術界に殴り込み!
女子大生ユニットの大いなる野望。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2013/11/22 10:30
左から阿良田蓉、吉川愛美、堀岡暦。ポーズは左から宮出、福地、武田勝のモノマネである。
秋たけなわ。スポーツの秋、芸術の秋であります。
その昔、筆者がメジャーリーグの試合を初めて観戦しに、米サンディエゴのペトコパークへ行った時のこと。目の前に広がるきらびやかな球場、ド迫力のプレー、球場の雰囲気なんてものも確かに素晴らしかったのだが、それ以上に“野球大国アメリカ”を印象づけたものは、球場近くの小さな画廊のショーウィンドウに飾られていたパドレスの至宝トニー・グウィンの油絵だった。
ベースボールアート。野球文化が根付くアメリカではすでに知られた概念ではあるが、日本ではまだまだ馴染みは浅い。
日本のプロ野球界に芸術を欲するとしても、かつては我々が見られたものは、和歌山の落合博満野球記念館で信子夫人の油絵と彫像と、フクシ君が作ったガンプラぐらいしか選択肢がなかったわけだが、この頃はプロ野球界にも芸術の波が押し寄せているようで、元ドラゴンズの英智がブログに載せた絵画が評価されてみたり、先日トライアウトを受けた元日ハムの木田優夫が「木田優夫のプロ野球選手迷鑑」(新紀元社)なる選手似顔絵の本を出版してみたり、元ロッテのバーナムJr.が似顔絵講座を開いてみたり、「俺は絵描きになる」と言い残して南の島に旅立ったと噂のSHINJOが個展を開いてみたり……と、前時代に比べれば野球×芸術が随分と身近に感じられるようになってきた。
現役東京芸大生3人のユニット「代打○○○」。
その流れは市井においても言えることで、このコラム内でも何度か活動を取り上げている“プロ野球芸術家”ながさわたかひろの登場をはじめ、昨年からは複数作家が野球のアート作品を展示する「Art×Baseball展」なる催しも行なわれ、好評を得たという話も聞き及ぶ。
そんな中、新たな野球アートのユニットが登場したと聞いた。現役東京芸大生3人によるそのユニットの名は「代打〇〇〇(スリーボール)」。
あの、ながさわたかひろの破滅的ともいえる芸術活動に影響を受け、野球とアートの融合を志す奇特すぎるお嬢さんたちは、デザインを得意とする阿良田蓉(あらたよう)、油絵の堀岡暦、メディア映像の吉川愛美という野球好きヤクルト好きの3名の女子大生。今月19日から原宿のデザインフェスタギャラリーにて初のグループ展を行うというので、その直前に話を聞いてきた。