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早大ドラ1トリオ、興南春夏連覇……。
2010年アマチュア球界十大ニュース!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/12/30 08:00
夏の甲子園大会決勝、沖縄代表の興南が東海大相模に勝って初優勝し、春夏連覇を達成。沖縄県勢としても夏の大会初制覇。春夏連覇は1998年に松坂大輔を擁した横浜以来史上6校目の快挙となった
國學院大悲願の初優勝、古豪・東芝3年ぶりの栄冠。
◆6位 國學院大、東都大学リーグ初優勝
國學院大は1931(昭和6)年春、専大、日大、中大、東京農大とともに結成した「五大学野球連盟(東都大学野球連盟)」の創立メンバーだが、東京農大とともに優勝から取り残されていた。2部リーグができた'50年秋から2010年春までは、1部リーグ在籍が19シーズンしかなく、最高成績は'60年春、'06年秋、'09年秋の3位。'96年春からは東北高、仙台育英高の名伯楽として知られる竹田利秋を監督に迎えるが、優勝に届かない。'10年秋は、そんな國學院大による創部80年目の快挙だった。
主将の渡邉貴美男(遊撃手)以外は無名の集団と言ってもいい。個人的には庄司輔(一塁手)、高木京介(投手)、清水隆弘(捕手)、谷内亮太(三塁手)に興味を持っているが、東都ファン以外、彼らの名前を知っている人はいないだろう。その國學院大が突っ走った。
第2週の東洋大で勝ち点を落とし(1勝2敗)、前途に暗雲が立ち込めるが、残り3カードを勝ち越し、東洋大、中大を振り切った。中大は10月26日の国士舘大戦、中3日空いている澤村拓一を温存して敗戦。これで自力優勝の芽がなくなり、優勝争いから脱落した。
◆5位 東芝3年ぶりの都市対抗制覇で神奈川の王座揺るがず
前で書いたように神奈川は全国でも最強豪地区として知られている。都市対抗優勝経験チームはJX-ENEOS(新日本石油ENEOS)、東芝の2つしか残っていないが、かつては日産自動車、三菱ふそう川崎、いすゞ自動車、日本鋼管が顔を並べていた。その中でも東芝は、9回優勝のJX-ENEOSに次いで、7回の優勝を飾っている('10年を含めて)。
サイドハンドからクセ球を左右コーナーに散らす藤田卓史の技巧が冴えわたり、1回戦が東海理化を2安打完封、準々決勝がJFE東日本を6回、自責点2、決勝がJR九州を3安打完封と完璧に近いピッチングで抑え込み、橋戸賞を獲得した。
◆4位 社会人ベストナインに元プロ2人選出
'10年社会人のベストナインは次のように決まった。
<投手> 濱野雅慎(JR九州) ※最多勝利賞10勝(15試合)も獲得
<捕手> 中野滋樹(JR九州)
<一塁手> 的場寛一(トヨタ自動車)
<二塁手> 佐藤二朗(ヤマハ)
<三塁手> 坂田篤彦(トヨタ自動車)
<遊撃手> 田中マルシオ敬三(JR九州)
<外野手> 北道貢(NTT東日本) ※最多打点賞17打点(15試合)
藤島琢哉(JR九州)
松永隆太(東芝)
<指名代打> 池辺啓二(JX-ENEOS)
この中で目を引くのが一塁手の的場寛一(元阪神)と二塁手の佐藤二朗(元ヤクルト)の名前だ。的場はプロ退団後の'06年から在籍5年目、佐藤は'04年にシダックス入社→同チームの廃部を経て、'07年からヤマハに入り直して社会人7年目。ともに苦難の道を乗り越えた末の栄冠である。
プロを終了すれば野球の道が断たれるというのが十数年前までの野球界だったが、現在は再戦の道が残されている。そういう現実を2人の受賞はしっかりと世に映し出してくれた。
大学球界は斎藤佑樹、高校球界は興南が伝説を残した。