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早大ドラ1トリオ、興南春夏連覇……。
2010年アマチュア球界十大ニュース!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/12/30 08:00
夏の甲子園大会決勝、沖縄代表の興南が東海大相模に勝って初優勝し、春夏連覇を達成。沖縄県勢としても夏の大会初制覇。春夏連覇は1998年に松坂大輔を擁した横浜以来史上6校目の快挙となった
2010年はアマチュア球界にとってどんな年だったのか、筆者が選んだ「十大ニュース」で振り返ってみよう。紹介する順序は、最後まで興味を引いてもらうため下位から上位にする。では、まず10位から――。
◆10位 澤村拓一、神宮最速の157キロ計測
5月4日(火曜日)東洋大戦、中大の本格派右腕・澤村拓一が神宮球場最速となる157キロをマークした。ゴールデンウイークということもあり、押し寄せた観客は東都大学リーグとしては異例の8000人。これも十大ニュースに迫る話題だろう。澤村のピッチングとともに、第1試合の国士舘大対亜大戦に先発した東浜巨(亜大)のピッチングも観客の目当てだったようだ。
筆者は午前中行われた練習試合、和光高対東京農大一高戦を見たあと駆けつけたので中大戦しか見られなかったが、スピードガン表示が「157キロ」を示したときはスタンドがドッと沸いた。なお、神宮球場のスピードガンは通常より速いとされているが、日刊スポーツ紙はスカウト陣のスピードガンも「156キロ」をマークしたと報じている。
(1)亜大5-2国士舘大 ※東浜……9回、6安打、6三振、0四死球、自責点1
(2)中大9-1東洋大 ※澤村……8回、5安打、9三振、3四球、自責点1
◆9位 高校2年生にスラッガーの素質秘めた強打者揃う
これはかなり筆者個人の思い込みが強い。高校野球で目につくのはバントの多さ。1死一塁でバント、1死二塁でもバントをして走者を先に進めようとする。得点圏に走者を置いて打てば、結果の良し悪しにかかわらずバッティング技術は上がるはずだが、高校野球では最低1人にしかそういうチャンスが与えられない(1死二塁でヒッティングすればそこで凡打しても次打者が打席に立てる。つまり、得点圏で2人が打つチャンスを与えられる可能性がある。それは、打つのがうまくなる選手が2倍になるということではないのか)。
校名はふせるが、夏の埼玉大会1回戦では3対11で負けている高校が4回、1死一、三塁の場面で5番打者に執拗にバントをさせていた(スリーバント失敗で三振)。何とかコールド負けだけは逃れたいという作戦である。こういう土壌からは絶対にすぐれた強打者は生まれない。プロ、アマにかかわらず、日本から強打者が生まれない伝統は、バントの影響があるのではないか。そんなことを鬱々と考えていた夏、甲子園大会で素質豊かな強打者を何人も見た。それも1、2年生に。早速名前を挙げよう。
丸子達也(広陵2年・一塁手) 左投左打 186/87
北川倫太郎(明徳義塾2年・外野手) 右投左打 185/82
萩原英之(九州学院1年・一塁手) 右投左打 177/80
濱田竜之祐(鹿児島実2年・三塁手) 右投左打 183/75
彼らが飛び出す背景にはプロ野球の影響が見逃せない。ここ数年の間に中村剛也(西武)、T-岡田(オリックス)が本塁打王のタイトルを獲り、中田翔(日本ハム)、筒香嘉智(横浜)も爆発寸前の気配を漂わせている。バント病が日本球界を覆っている中、少ないながら外国人選手に負けないようなスラッガーが登場してガンガン、ホームランを打っている。その姿に押されるようにスラッガーの卵が甲子園大会に現れたのかなと、一筋の光明を見るような思いでいる。