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「負けていい試合なんて一つもない」
三浦淳宏がザックジャパンに直言! 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byNanae Suzuki

posted2013/10/30 10:31

「負けていい試合なんて一つもない」三浦淳宏がザックジャパンに直言!<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

11月4日にニッパツ三ツ沢球技場で引退試合を行う三浦淳宏。

今から強豪国との差を詰めるには?

「日本も同じようなスタイルをイメージしていると思うんですよ。もちろん、時間を重ねればもっと良くなると思う。でも、日本がパスをつないでいるのは、縦に動いている選手ではなく、ボールをもらいに下がってくる選手ですよね。そこが決定的に違う。

 日本はとにかくボールを動かすことに意識を置いている。でも、どうしても勝負の縦パスを出すことができず、失わないために安全な選択肢を選んでしまっている。確かにパスは回っていると思います。でも相手も付いてくるから背負ったまま前を向けない。下がって受ける、下がって受ける、を繰り返していれば、時間が掛かって相手の守備組織も整ってしまいますよね。そうなると簡単には崩せない」

 決定力不足もこれに由来する。W杯優勝を狙う列強国、ドイツやブラジル、スペインやオランダも、“アジアにおける日本”と同様に対戦相手に引いて守られるケースが多い。しかし縦への選択肢の多さとボールスピードや攻撃テンポの速さ、多少強引にでも前を向こうとする姿勢が相手に脅威を与え、その脅威がやがて相手チームの組織の崩壊につながる。それができるからこそ、列強国が列強国たりえると三浦は考えている。

「日本はまだ、その前の段階。丁寧にパスをつないで“やること”を確認しながら、リズムをつかもうとしているだけ。本当の強豪国との差はそこにありますよね。引いた相手に対してどうやって崩すかというのは、方法論ではなく精度の問題だと思うので。日本はまだそのレベルに達していない。しかも、今から“もうひと山”越えるのは簡単じゃないと僕は思います。可能性を感じられる攻撃が見られたのは、僕の感覚ではセルビア戦で1度、ベラルーシ戦でも1度しかなかった」

戦いに臨む上での最低限のもの。

 ただ、三浦は「新たなチャレンジ」のすべてを否定している訳ではない。チームが確固たる共通認識と高い志を持ってそれに臨むなら、最後までその信念を貫けばいい。新たな、日本らしいスタイルの確立は日本サッカーがいずれ通らなければならない道であり、プレーヤーとしての目線でこのチームにポテンシャルを感じるからこそ、挑戦することの意味を感じる。

 しかし、ここのところの日本代表は、戦いに臨む上で“最低限”のものを忘れている気がしてならない。それがなければ、たとえドイツのような理想的なサッカーを体現したとしても「W杯で勝てるチーム」にはならない。三浦はそう考えている。

「やっぱり、“気持ち”をもっと前面に出さないと。自分たちが新しいことにチャレンジしている段階であろうと、それが強化試合であろうと、負けていい試合なんて一つもないんですよ。W杯で勝つのは、どんな内容や状況であっても結果を手にする強さを持ったチーム。そういうチームは、内容にこだわってチャレンジしていることを言い訳にしない。

 ドイツは既に本大会出場を決めていたのに、ものすごい勢いでスウェーデンに勝った。一対一の局面における球際の強さやゴールを目指そうとする“縦への意識”、相手ボールを奪おうとする気迫、カバーリングの意識の高さ、選手個々のプレーに表れているアピールの気概と危機感……そういった要素が、事実上の消化試合でも全く衰えない。僕はあの試合を見て、これこそがW杯で優勝を狙う本当の強豪国の姿勢だと思いました」

【次ページ】 オランダ、ベルギーにどう挑むのか。

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