日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
W杯切符逃したセルビアに0-2……。
日本代表の攻撃に足りないものとは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/10/12 12:35
お互いに決してチャンスは多くなかったが、その少ないチャンスをセルビアは確実にものにした。これが欧州の強豪との差なのだろう。
ゲーム支配者はセルビアだった。
だがスタンドから見た印象は、指揮官の印象と少し違う。
確かにチャンスはつくれたが、セルビアの守備は日本のように失点の危険度を高めてはいなかった。途中まではやられても、最後だけはやらせなかった。その意味でセルビアが本当にヒヤリとしたのは、前半29分、ゴール前で本田のパスを受けた長谷部誠がスルーパスを送り、ギャップを突いて入ってきた香川真司がシュートを放った場面。ここで決めていれば流れは変わったかもしれないが、これ以降セルビアはより注意深くなり、1点リードしてからはブロックをつくって中を固めてくる。後半は間延びしてスペースを使われながらも、崩されることはなかった。
ボール支配率は日本のほうが上だ。だが“ゲーム支配者”はセルビアだった。
ボールが日本の2列目に入ってくるとタイトに体をぶつけてくるボランチに、センターバックはプレミアリーグで活躍するイバノビッチ(チェルシー)とナスタシッチ(マンチェスター・シティ)。強くて高い壁の前に、日本はサイドに散らしてから次の攻撃に策がなかった。
困ったときに頼れる「カタチ」がない日本。
日本の焦りを逆手に取ったロスタイムの追加点もまさに「最後の局面」で落ち着いていた。
細貝萌のミスパスから一気にカウンターに持っていき、左サイドから大きく逆サイドに振ってからのクロスに途中出場のヨイッチが飛び込んできてのゴール。日本の守備陣を広げておいて、その間を突くという注文どおりのカウンターをしっかりとゴールに結びつけてきた。セルビアは高さの利を活かせなくも、それ以外で点を取ってきた。逆に日本は素早いパスワークとアジリティーの利を活かせないと、打つ手がなかった。そしてもう一つ。セルビアは訓練されたカタチからゴールを奪ったが、逆に日本には「困ったときに頼れるカタチ」がないということもあらためて浮き彫りになった。
強いて収穫を挙げるとすれば、前線の守備意識だろうか。確かに9月のグアテマラ戦、ガーナ戦から改善されている前線からの連動した守備は、セルビア相手にも一定の効果があった。前述した香川の決定的なシュートシーンも、柿谷のプレッシングによってGKのキックにプレッシャーを与えたことで得たスローインから始まっている。香川も自陣まで戻って粘り強い守備を見せるなど意識が高まってきた印象がある。