濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
S-cupで本職を圧倒したブアカーオ!
ムエタイとK-1を融合した強さの秘密。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2010/12/08 10:30
総合格闘技を土壌とするトビー・イマダとの決勝戦。ブアカーオ(右)は得意のヒザにローキックを織り交ぜ、S-cup初出場にして危なげなく初優勝を飾った
ブアカーオは“スタンディング・グラップラー”!?
K-1参戦以前、筆者がタイのリングで見たブアカーオは、首相撲中心のファイトスタイルだった。
相手に絡みつき、ヒザ蹴りを放ち、バランスを崩して転倒させる。離れて打ち合う場面はほとんどない。“スタンディング・グラップラー”と言いたくなるような選手だったのだ。
『S-cup』でも、ヒザでダメージを与え、重心を巧みにコントロールする場面が目立った。“組み勝ち”しているから投げや関節技を未然に防ぐことも難しくない。
剛に潜ませる華麗なるK-1スタイル。
一方で“K-1仕様”のファイトスタイルも完全に捨てたわけではなかった。
一回戦の最終ラウンドで宍戸からハイキックでダウンを奪ったこと、あるいは決勝で非情なまでの足攻撃に徹したこと。ポイントでリードしているからといって技術で“流す”ことなく相手を仕留めにかかる姿勢は、間違いなくK-1で培われたものだ。
彼が見せた闘いの荒々しさ。それを“イキイキしていた”と言い換えることもできるだろう。
初参戦のシュートボクシングで、ブアカーオはムエタイとK-1がハイブリッドされた彼本来の、そして独自のポテンシャルを初めて全開にしたのである。今年、K-1では出場機会がなかったブアカーオだが、シュートボクシングは彼にとって文字通りの“新天地”だった。