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このまま昇格して大丈夫!?
首位陥落のガンバを覆う“J2の空気”。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2013/10/01 12:40
現在のガンバで数少ない「仕掛ける意識」を持つ宇佐美貴史。11試合で9得点と、リーグ最速ペースでゴールを生む男はガンバを甦らせることができるか。
昇格確実の気の緩みが……いらぬ敗北を呼ぶ。
たとえば、中盤でプレスを掛ければ相手は動揺するはずなのだがあえて行かず、戻してセーフティーにプレーする。その結果、相手に「いけるぞ」と思わせてしまい、リードしても同点にされたり、終盤押し込まれて苦しむことになっている。
積極的な動きの無さは、3位との勝ち点差が開いて自動昇格できる2位以内がほぼ確定し、変に余裕が出てしまった影響もあるのだろう。そのせいか、相手が100%本気で立ち向かって来ているのに、同じ出力を出さず、「このくらいで大丈夫でしょう」「誰かが点取ってくれるでしょう」という甘さが見て取れるのだ。そういう弛緩した意識が、結果的に勝ち点を失うことに繋がっている。
こうした状況に歯止めをかけ、強さを取り戻すには、ガンバはどうすべきなのだろうか。
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攻撃面では、まず「走る」「動く」という基本的なことが必要だ。
ガンバは個々の技術が高いあまり、それにおぼれているところがある。強かった時のガンバのサッカーは、中盤はもちろん、最終ラインがボールを持った時、前線は動き出す準備をしていた。大黒将志やアラウージョはまさにそうだったし、実際、優勝した2005年は2人でシーズン49得点も叩き出していたのだ。
また、「前への意識」も重要だ。
現在のチームでも、二川孝広は、動きながら常に相手の急所を狙っているし、体勢が崩れそうになりながらもラストパスを出すなど前を向いてプレーする意識が強い。それが前線の選手にも伝播し、二川が持ったら動き出そうという意識を引き出し、攻撃のいい流れを作っていた。
今のガンバで攻撃のスイッチをいれられるのは倉田秋と宇佐美貴史だけ。彼らが持った時だけ、何かが起こりそうな感じがする。
まずは基本に立ち返り、セーフティーではなくチャレンジする意識を持ってプレーする。それがなければ、ガンバ伝統の分厚い攻撃は戻ってこないだろう。
ラインにこだわり過ぎて、守備の本質を忘れてないか?
守備面では、9月に入りラインコントロールを徹底することに着手していた。
丹羽大輝が水戸戦から最終ラインに入っているのは、そのためだ。ここに来て厳しくやろうとしたのは、来季の戦いを見据えていることもあるが、守備において「なぁなぁ」な部分が多く、誰かに任せるという依存体質が強かったせいで失点する試合がこれまで多かったからに他ならない。
ラインコントロールをしっかりするには、全体をコンパクトにするなど、チーム全体の守備の意識を高める必要がある。そうして失点をなくす。長谷川監督は、そこを狙ったのだろうが、皮肉なことに一部の選手はラインにこだわり、守備の基本を忘れてしまったかのようだ。
愛媛戦の失点はセットプレーからだったが、ラインは確かに多少ズレがあるものの問題では無かった。真の問題は、誰かが体を当てたり、競ったりすることなくフリーで得点されたことだった。つまり、人やボールへのケアという基本的なところが抜けていたのだ。何かに頼るのではなく、自分で判断して相手を抑える。戦術の以前にその基本を大事にし、もっと泥臭く守備をしていく意識が必要だ。