野球善哉BACK NUMBER
「軍隊のように厳しい練習」も今は昔。
CS初進出を果たした広島の変貌ぶり。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/30 12:20
野手出身ながら、調整を自主性に任せるなど、投手起用に柔軟さを見せた野村謙二郎監督。短期決戦のCSではどんな采配を見せてくれるのだろうか。
借金を背負ってのCS進出は避けたいが……。
9月10日から7連勝し、9月29日までの期間では12勝4敗1分。激しい3位争いを抜けだせたのは、勝負所をしっかり見極めた絶妙のタイミングでの起用があったからだ。
それができたのは、シーズンの序盤から無理をさせてこなかったからという理由だけでなく、遡って考えると……キャンプ中から無理な投げ込みをしてこなかったから、とも言えるのではないか。
一方、このCS進出に対して懐疑的な見方があることも否定できない。
どういうことかというと、残りの3戦で広島は全勝しなければ、借金を抱えてのCS進出になるというのだ。
もしCSで彼らが勝ち上がり、日本一にでもなれば、勝率5割以下のチームが優勝するという前代未聞のケースになる。それをおかしいと思うファンも少なくはないだろう。
しかし広島は12球団で唯一、これまでFA制度で選手を一度も獲ったことがないチームなのである。そんなチームがCSに進出したというのは……これほどのロマン、いまだかつてなかったのではないか、と思う。
スカウトの眼力によるドラフトと生え抜きの選手育成に力を注ぎ、地道に根を張りチーム力を蓄えてきた。金銭に頼ることなく、フロント、編成、そして監督・首脳陣が、それぞれの知恵を出しながら地道にチームを育て、今シーズン初めてCSに進出するのである。
未知の戦いに挑む赤ヘル軍団に、パ・リーグと比べて盛り上がりに欠けるといわれるセ・リーグのCSをかき回してもらいたい。