野球善哉BACK NUMBER
「軍隊のように厳しい練習」も今は昔。
CS初進出を果たした広島の変貌ぶり。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/30 12:20
野手出身ながら、調整を自主性に任せるなど、投手起用に柔軟さを見せた野村謙二郎監督。短期決戦のCSではどんな采配を見せてくれるのだろうか。
前田健が切り開いた、広島の新しい育成方法。
2012年のキャンプでは、新人の野村がなかなかブルペンに入らないと騒がれたこともあった。新人といえば、デモンストレーションのように連日のブルペン入りを果たすが、野村は決して無理をしなかった。
「マエケンさんがそういうスタイルっていうのも参考になりますし、自分は投げ込みたい方ですけど、キャンプで無理をして投げても、シーズン一杯はもたないだろうし」と以前に今村が話していたことがあったが、彼も決して無茶はしていなかった。
そうした若手の姿勢を、コーチだった頃の大野氏に伺ったことがあった。大野氏は自身の思いとは裏腹な意見を口にしていた。
「コーチとしては投げ込んでほしい。投げ込んでこそ、身体が覚えるという部分も絶対にありますからね。ただ、最近の子は投げたがらないので、そこは本人たちの考えを尊重しています」
監督や首脳陣だけが主導してトレーニングメニューを作るのではなく、時には選手を尊重しながら育成してきたことが、一つの成果となって今年の成績に現れてきているのだろう。
中4日、5日のローテで投手を回した9月に躍進!
この9月、広島が快進撃を続けられた理由にはもうひとつある。
それは、投手陣が高いパフォーマンスを見せたことだ。それも、通常の中6日のローテーションではなく、間隔を狭めてのものだったのである。
もともと、前田健とバリントンは中5日で回ることが多いが、野村や大竹もそれに続いた。
「野村監督は、投手には“1年間投げ続けてほしい”という感覚を持っているんですよ。だから、完投にはあまりこだわってない。むしろ“シーズン終盤まで投げさせたい”という起用をしていますよね。この9月は勝負所だと踏んで、中4日か5日の起用をしてきた。それに選手が応えましたよね」と大野氏は言う。
事実、この4本柱での完投は6しかない。
内訳は、前田健太3、バリントン0、大竹1、野村が2である。田中将大(楽天)の完投数8を、4人の総数で下回っているのである。
バリントンは田中を上回る28試合に先発していながら、イニング数では下回っているし、2度離脱した前田健も、先発した試合数は田中と同数だがイニング数は少ない。
イニング数が少ないことで、コンディションがある一定のところで保たれているのを見極め、勝負所の9月、野村監督は勝負をかけた。