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川崎宗則、青木宣親が高評価の理由。
“Quality At Bat”という新潮流。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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posted2013/09/27 10:30

川崎宗則、青木宣親が高評価の理由。“Quality At Bat”という新潮流。<Number Web> photograph by Getty Images

メジャー2年目、ブルージェイズ所属の川崎宗則選手。ここまで打率.237と数字は振るわないが、出塁率.331、長打率.319、四死球34とチームのために徹して打席に立っていることがよくわかる。

 9月中旬のこと。岩手県の高野連と同野球協会審判技術委員会が協議を行ない、「2ストライクに追い込まれてから打者が故意にファウルを狙った場合は、スリーバント失敗でアウトにすることを確認した」というニュースが目に留まった。

 夏の甲子園で物議を醸した、花巻東高の千葉翔太選手の「カット打法」に関連した決定であることは明らかだった。

 元々岩手県予選(もっと厳密に言えば本大会の準々決勝)まで注意すら受けていなかったカット打法が、上層部の間できちんと議論、検証されることなく、トップダウンでなし崩し的に違反行為とされてしまう措置は、何とも釈然としない。

 そこでこの件に関して、メジャーの視点から考察してみたいと思う。

“Quality At Bat(クオリティ・アット・バット)”

 今シーズン、メジャーの取材を続けていて、首脳陣から何度となく聞いた言葉だ。これは単純に“質の高い打席”と考えてもらえればいいだろう。

打者の貢献度を測るクオリティ・アット・バット。

 このコラムでも取り上げている、“Quality Start(クオリティ・スタート)”は、今や日本でも広く認知され始めているのではないだろうか。これは、6イニング以上3失点以下の登板を指すもので、先発投手の指標としてメジャーではすっかり定着したカテゴリーだ。

 一方のクオリティ・アット・バットは、クオリティ・スタートほど明確な数字で規定されているわけではないが、打者の貢献度を評価する表現方法として首脳陣が頻繁に使用しているものである。

 そしてクオリティ・アット・バットを体現している打者として評価されているのが、川崎宗則選手と青木宣親選手の2人だ。

「カワサキは日本人選手らしく基本がしっかりしていて、野球知識を理解している。打撃でも自分が何をすべきか理解しており、決して間違ったことをしない。たとえアウトになったとしても、ピッチャーに球数を投げさせるなどチームにとってプラスになる仕事を確実にやってくれる」

 この川崎に対するジョン・ギボンズ監督の評価にすべてが凝縮されている。

【次ページ】 地元ファンを沸かせる、川崎の打席での粘り。

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