スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
上原の快投とボストンの勤勉。
~レッドソックス快進撃の理由~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/09/20 10:30
クローザー上原の存在が頼もしいレッドソックスは、2007年以来の世界一を狙う。
上原浩治の快投がついに止まった。
2013年9月17日、対オリオールズ戦で先頭打者に三塁打を浴び、つぎの打者に犠飛を許したのだ。結果、連続無失点記録は27試合(30回3分の1)で、連続凡退記録は37人で停止した。
とはいうものの、救援投手としては、2007年のボビー・ジェンクス以来の快進撃だった。ホワイトソックスの抑えだったジェンクスは、同年8月12日に連続41人斬りの快挙を達成した。41人目の打者はマリナーズのユニエスキー・ベタンコート。ついでにいうと、38人目の犠牲者は、われらがイチローだった。
先発投手をふくめると、上には上がいる。
現在の最長記録は、'09年7月に、やはりホワイトソックスのマーク・バーリーが記録した連続45人斬りだ。いうまでもないが、間には完全試合がはさまれている。つぎの試合でも5回3分の1まではパーフェクトに抑えていたのだが、そこでとうとうヒットを許してしまったのだった。
連続ノーヒットにまで範囲を広げると、1904年のサイ・ヤングが浮上する。この年のヤングは、完全試合をはさんで25回3分の1連続無安打というとてつもない記録を残している。打者の数にすると76人。これはたぶん、不滅の大記録だろう。
エースも、タイトルに絡む打者もいない。
それはともかく。
上原の快投(68回3分の2を投げて4勝1敗19セーブ。防御率=1.18。奪三振=95)にも助けられて、レッドソックスはア・リーグ東地区優勝を目前に控えている。これまた予想外の快進撃だ。なにしろ2012年のレッドソックスは、監督がボビー・ヴァレンタインだったこともあってか、69勝93敗の成績で地区最下位に沈んだのである。
ではなぜ、レッドソックスは、わずか1年でこんなに強くなったのか。いずれ馬脚を現す、もうじきへこたれるなどと陰口を叩かれながら、大リーグ全球団中最高の勝率をあげるに至ったのか。
この球団に絶対的なエースはいない。前半戦はクレイ・バックホルツが目覚ましい好投を見せていたが(故障前は9勝0敗。防御率=1.71)、故障での離脱が長引き、ここへ来てようやく戦線に復帰したばかりだ。先発2番手のジョン・レスターや3番手のジョン・ラッキーは、3点台後半の防御率をなんとか維持しているものの、全幅の信頼を置けるわけではない。
打線に眼を転じても、個人タイトルにからむような打者はあまり見当たらない。デヴィッド・オルティースが打率でリーグ6位、打点でリーグ8位につけているが、それ以外はさほど目立たない。マイク・ナーポリやダニエル・ナーヴァがぎりぎりベストテンに食い込んでいるものの、あとはジャコビー・エルズベリーがリーグ1位の52盗塁を記録していることが眼を惹く程度だろうか。