ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
スタメン定着&ベストイレブン!
内田篤人が語る「成長の証」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/11/20 08:01
南アW杯前は、身体の線が細いイメージだった内田だが、身体の大きな選手が多いブンデスリーガで鍛えられ、別人のように当たり強くなっていた
フンテラールやラウールにクロスを送り続ける内田。
さらに、翌週のヴォルフスブルク戦でも決定機を演出した。ファーサイドにクロスを送り、ラウールが頭で折り返し、ゴール前でフンテラールが合わせた場面だ。フンテラールのシュートが浮いてしまい、ゴールにはならなかったのだが、これもまた狙い通りだった。その前の試合では「人」に合わせたが、この試合では「エリア」を狙った。
「ファーに送ろう、という狙いでした。ニアサイドには(ディフェンダーが)いるだろうなと思って。(自分のところにボールが来るまでに)時間もかかっていたので、ファーに送ろうと。ああいうところにラウールがいてくれる。少しずつ合ってきたのかな」
確実に歩みを進めているものの、内田自身は満足する素振りは見せない。
「まだ試されているという感じもするので。毎試合そうですけど、誰が出ても一緒だから。(レギュラーが)固定されることはないですから」
毎日極度の緊張感に包まれる、マガト監督の練習風景。
ヴォルフスブルク戦の翌週、ミニゲームを主体としたハードな練習が1時間半あまりも続いたあとのことだ。一部のメンバーは、居残りでの練習を課された。
内田、ハオ、エスクデロの3人のサイドバックは、さらに30分近くにわたってサイドからクロスを送り続けた。別のグラウンドでは、左サイドバックを務めるシュミッツらが、ヘディングの練習を課されていた。
一足先に練習を終えたシュミッツは、クラブハウスへと続く階段の前で立ち止まり、内田たちの練習を眺めていた。
マガト監督のもとでは、いつスタメンを外されるかわからない。ある試合でスタメンだった選手が、次の試合ではベンチ入りメンバーから外れることさえある。右サイド、左サイドも関係ない。だからこそ、ポジションを同じくするライバルの動きに敏感になっているのだ。
しばらくして、練習を終えた内田が引きあげてくる。
「まぁ、いつもやってることですからね」
こともなげに内田は、居残り練習について振り返った。
緊張感うずまくハードな練習は、毎日のように続いていく。決して楽しい類のものではない。
「練習は大変ですけど、これくらいやらないとねぇ……まだ若いですから」
涼しげな表情でそう語る内田は、一体どんな成長を遂げていくのだろうか。