詳説日本野球研究BACK NUMBER
ついに終わった斎藤佑樹の大学野球。
神宮大会決勝は珠玉のラストゲーム。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byMasashi Adachi
posted2010/11/19 12:15
早大野球部第100代主将として、チームを神宮大会初優勝に導いた斎藤佑樹。試合後のインタビューでは涙に目を潤ませながら、「上のステージでもエンターテインメントできるように頑張ります」と力強く語った
大石を出しておけば間違いない、というくらいの信頼感。
大石は打者6人を5三振に斬ってとる快投で、今秋のドラフトで“6球団1位入札”された実力をまざまざと見せつけた。
とにかくストレートが速い。
否、速いというよりキレる。打者の手元でホップするような球筋なのだ。
大石を出しておけば間違いない、くらいの信頼感がベンチにはある。夏に行われた世界大学野球選手権では、日本人投手として唯一人、オールスターチーム(大会のベストナイン)メンバーに救援投手として選出されているほどである(他の日本人選手では、伊志嶺が外野手で選出されている)。
6球団競合の末、当たりクジを引き当てた西武・渡辺久信監督が「大石はリリーフではなく先発投手として考えている」と表明したが、その気持ちが理解できない。藤川球児(阪神)と同質のストレートは6、7イニングも投げ続けられない。1、2回の短いイニングだから投げられる。その珠玉のストレートをどうして失わせようとするのか、何度も言うが理解できない。
荒木大輔も松坂大輔も持ち得なかった貴重な資質を持つ斎藤。
斎藤は慶応大と戦った今秋のリーグ優勝決定戦に勝ったあと、こんなことを言った。
「いろんな人に『斎藤は何かを持っている』と言われ続けてきました。今日、何を持っているのか確信しました。それは仲間です」
お茶目な斎藤――。神宮大会優勝後のインタビューではアナウンサーから「マイクをお渡ししましょう」と言われ、手に持たされてしまった。皆、斎藤のユーモア精神をわかっているし、愛している。荒木大輔も松坂大輔も持ち得なかった貴重な資質はプロ入り後も多くのファンから歓迎されるだろう。
実力に目を転じれば、まず驚かされるのが勝負運の強さだ。
'06年夏の駒大苫小牧との決勝戦では、1対1のまま延長戦に突入し、延長15回引き分けとなった。37年ぶり史上2度目となった翌日の再試合では、2試合続けての完投(4対3)で駒大苫小牧の選手権3連覇を阻み、チームに優勝をもたらしている。